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2023 年度 実施状況報告書

脳卒中患者の予後予測:予測モデル構築と臨床的有用性の検証

研究課題

研究課題/領域番号 22K11356
研究機関兵庫医科大学

研究代表者

小山 哲男  兵庫医科大学, 医学部, 特別招聘教授 (40538237)

研究分担者 道免 和久  兵庫医科大学, 医学部, 教授 (50207685)
内山 侑紀  兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (50725992)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード脳卒中 / 予後予測 / 帰結 / 拡散テンソル法 / トラクトグラフィー
研究実績の概要

脳卒中患者は本邦で約111万人と推定される。その患者の約半数は上肢下肢機能や認知機能、日常生活動作に重篤な障害を呈する。このような障害の軽減を目的として、リハビリテーションが行われる。適切なリハビリテーションの実践のためには、個々の患者の回復度合いを予測すること、つまり予後予測が必要である。近年の研究により、脳画像診断のひとつであるMRI拡散テンソル法が有用であることが明らかとなってきた。その解析手法の一つに、脳内神経線維の走行を擬似的に表現するトラクトグラフィーがある。この手法は病変による神経線維の障害を視覚化し、さらに定量化を行う点で優れている。その反面、線維追跡の出発点と終点の設定は検者の手作業によるものであること、さらに1症例の解析に約24時間を要していたことより、臨床現場での実践応用は限定的であった。私たちの研究グループは、研究初年度(令和4年度)、線維追跡に標準脳テンプレートを使用すること、さらにGraphics Processing Unit(GPU)を用いた並列処理を導入することで、手作業を経ずに1症例あたり40分程度で解析が完了する環境を実現した(標準化自動化トラクトグラフィー)。研究2年目の令和5年度、標準化自動化トラクトグラフィーの臨床現場での実践応用を確かめるため、上肢下肢機能や認知機能(主に言語機能)の障害に着目した臨床研究を行った。研究2年目の令和5年度、私たちの研究グループは、研究成果の一部を3編の英語論文として公表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

近年の研究研究より、脳卒中患者の予後予測において脳画像が重要であること明らかとなってきた。私たちの研究グループは、脳画像のなかでも最近注目を集めているMRI拡散テンソル法、その解析法のひとつであるトラクトグラフィーに着目して一連の研究を行なっている。研究初年度の令和4年度、私たちの研究グループは、1例あたり約40分で解析する標準化自動化トラクトグラフィーの臨床応用に成功した。研究2年目の令和5年度、累計200症例を越える脳卒中患者に標準化自動化トラクトグラフィーを用いた評価を行い、脳卒中予後予測研究を進めている。研究初年度の令和4年から2年目の令和5年度までの研究成果は既に累計4編の英語論文として公表がなさている。以上より、本研究はおおむね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

私たちの研究グループは、MRI拡散テンソル法のトラクトグラフィーを脳卒中患者の予後予測として実践応用することに取り組んでいる。研究初年度(令和4年度)に、高速かつ再現性の高い手法である標準化自動化トラクトグラフィーを構築した。研究2年目の令和5年度、実臨床で200例以上から標準化自動化トラクトグラフィーのデータ収集を行った。次年度(令和6年度)も継続して、毎週約3例程度のデータ収集を行い、研究期間終了時で累計約350例のデータを集積する予定である。多くの既存研究において、脳内神経線維束の健全性を評価する指標として、トラクトグラフィーにより算出されるfractional anisotropy(FA)値が注目されている。次年度において、集積されたデータより、FA値と長期予後の関連性の定量的検討を行う。長期予後の指標としては上肢下肢機能障害の重症度、日常生活の自立度、総入院日数を使用する予定である。まずはこれらの予後指標とFA値の単純相関を検討する。次に、長期予後に影響を与える他の因子(例: 年齢、併存疾患の重症度)を変数に組み込んだ多変量解析(例: 重回帰分析、多変量ロジスティック回帰分析、一般線形モデル解析など)を行い、FA値と組み合わせた予後予測式を導出する。これにより、トラクトグラフィーを用いた脳卒中患者の予後予測法を構築することを今後の研究の推進方策とする。

次年度使用額が生じた理由

私たちのグループは既に研究成果の論文化に取り組み始めている。研究成果の一部は現在、2編の原稿として論文誌に投稿済みである。うち1編は論文受領となって現在校正中、もう1編は査読中である。近年、公的研究費を用いた研究活動の論文公表はオープンアクセスが推奨されている。オープンアクセスとするには一般に論文1編あたり15-30万円程度の費用が必要で、一般に論文公表日程の直前に決済がなされる。投稿中の原稿に関して、オープンアクセス費用支払いに備えておく必要があった為、次年度の前倒し請求を行った。受領された論文1編の公表日程が論文誌の編集都合で令和6年5月1日となり、その費用支払いが令和6年の会計年度となったため、未使用額が生じている。次年度の前倒し請求を行ったこと、および未使用金が生じたことは、この事由によるものである。研究計画全体の進捗はおおむね順調であり、研究遂行についての時間管理に大きな変更は生じていない。未使用金は予定通りに主にオープンアクセス費用に充てる。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Outcome Prediction by Combining Corticospinal Tract Lesion Load with Diffusion-tensor Fractional Anisotropy in Patients after Hemorrhagic Stroke2024

    • 著者名/発表者名
      Koyama Tetsuo、Mochizuki Midori、Uchiyama Yuki、Domen Kazuhisa
    • 雑誌名

      Progress in Rehabilitation Medicine

      巻: 9 ページ: -

    • DOI

      10.2490/prm.20240001

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Applicability of fractional anisotropy from standardized automated tractography for outcome prediction of patients after stroke2023

    • 著者名/発表者名
      Koyama Tetsuo、Mochizuki Midori、Uchiyama Yuki、Domen Kazuhisa
    • 雑誌名

      Journal of Physical Therapy Science

      巻: 35 ページ: 838~844

    • DOI

      10.1589/jpts.35.838

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Automated Tractography for the Assessment of Aphasia in Acute Care Stroke Rehabilitation: A Case Series2023

    • 著者名/発表者名
      Mochizuki Midori、Uchiyama Yuki、Domen Kazuhisa、Koyama Tetsuo
    • 雑誌名

      Progress in Rehabilitation Medicine

      巻: 8 ページ: -

    • DOI

      10.2490/prm.20230041

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 脳卒中患者の予後予測-脳画像解析に基づいて2023

    • 著者名/発表者名
      小山哲男、道免和久
    • 学会等名
      第60回日本リハビリテーション医学会
    • 招待講演

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公開日: 2024-12-25  

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