研究課題/領域番号 |
22K11361
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研究機関 | 株式会社国際電気通信基礎技術研究所 |
研究代表者 |
錦戸 信和 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 事業開発室, 研究員 (60610409)
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研究分担者 |
丹喜 信義 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 事業開発室, 研究員 (60441573)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 吃音 / MRS / 大脳基底核 / 運動ループ / 評価用ファントム |
研究実績の概要 |
吃音の症状は音素や単語の先頭で生じることが多いことから、発話運動の制御に関与する大脳皮質を含む脳の運動ループに含まれる領域の中、発話運動の開始・停止に関する領域が本研究で磁気共鳴スペクトロスコピー法(MRS)の対象に適していると考え、先行研究や関連研究の文献調査を実施した。この結果、Picture naming taskを用いたfMRI実験により、吃音のない被験者を対象とした場合に発話運動の開始・停止に関連し賦活する領域が報告されている(e.g. N.Janssen, 2020)。また、他のPicture naming taskを用いたfMRI実験により吃音のある被験者の場合、異なる領域の賦活が報告されている(e.g. C.Lu et al., 2010)。従って、本研究ではPicture naming taskによるfMRIの実験デザインを検討し、また提示する視覚刺激としてNishimotoらにより構築された線画データベース(T.Nishimoto, 2005)を入手した。 本研究では脳の運動ループに含まれる領域をMRS撮像の計測対象としており、運動ループには大脳基底核も含まれる。しかし、大脳基底核は異なる成分を持つ組織が狭い範囲で隣接していることから、特定の領域に含まれる代謝物の計測が難しくなっている。そのため、大脳基底核の状態を模擬する評価用ファントムを用いてMRSによる計測の検討を行うことを考え、MRIで使用可能な評価用ファントムに関する調査を実施した。その結果、現状では本研究にそのまま利用可能な評価用ファントムは見当たらないため、既存の評価用ファントム(130型 qMRIシステムファントム, Caliber MRI社)の一部変更、またはDeeneらにより開発された評価用ファントム(Deene et al., 2022)を参考に新たな評価用ファントムの開発を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初予定していたMRSにより計測する領域を特定するためのfMRI実験の実験デザインや課題を変更したため。また、科研費に関する体制が変更されたことにより、事務処理に滞りが生じたため。
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今後の研究の推進方策 |
検討したfMRIの実験デザインおよび入手した線画データベースに基づき、刺激提示プログラムを作成し、fMRI実験を実施する。実施したfMRI実験により得られた結果と先行研究の内容を踏まえて、MRSによる計測対象領域を決定する。 MRIで使用可能な評価用ファントムに関しては、コスト面等を含めさらに詳細な調査の後に、評価用ファントムの開発に着手する。評価用ファントムを開発する際には、必要に応じて3Dプリンターも利用し、時間的および費用的コストを削減する。 さらに開発した評価用ファントムを用いて本研究で着目している脳内代謝物(グルタミン酸(Glu)とガンマアミノ酸(GABA))の信号を精度良く計測するためにMRS撮像のパラメータを検討し、実際の被験者を対象にMRSによる脳内代謝物の計測を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験デザインの変更等により予定していたfRMI実験が実施できず、また評価用ファントムの開発も遅れているため。 今年度はfMRI実験のデザインが決定し、実験に必要となる線画刺激も入手していることからfMRI実験を実施する。 MRIで使用可能な評価用ファントムの開発についても、開発に関する調査は完了しているため、今年度、評価用ファントムを開発し、MRS撮像の検討を行う。
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