研究課題/領域番号 |
22K11388
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研究機関 | 神戸常盤大学 |
研究代表者 |
八木 孝和 神戸常盤大学, 保健科学部, 教授 (10346166)
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研究分担者 |
吉田 幸恵 神戸常盤大学, 保健科学部, 教授 (50269841)
齋藤 充 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (50347770)
大塚 佳代子 関西福祉科学大学, 保健医療学部, 教授 (70738997)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 咀嚼運動 / 発達障害児 / 定型発達児童 / 表情解析装置 |
研究実績の概要 |
咀嚼機能の評価には専門的知識や技術が必要であり、特別支援学校や放課後デイサービスなど歯科関連職種の少ない施設では、発達障害児の咀嚼機能評価を客観的に行うことが難しい。また、従来の咀嚼運動測定機器では、顔面や口腔内への顎運動測定装置の装着が必要であり、被検児への負担が大きく、自然な咀嚼運動の記録が困難である。そこで我々は、臨床現場で撮影した自由咀嚼場面の動画を用いて咀嚼機能を判定できる方法について検討し、表情解析ソフトを用いた咀嚼機能評価法の開発に取り組んでいる。 今年度は、対照群として、6歳~13歳の定型発達児童10名(男児5名、女児5名)と発達障害児(ダウン症児3名)に対し、咬筋と舌骨上筋群に(TS-MYO:株式会社トランクソリューション社製)を貼付し、咬筋筋電図を採得できる状態で、被験食品(プリン、ペースト粥、全粥、軟飯、米飯、ビスケット)を各3回ずつ摂取してもらい、咀嚼場面はTS-MYOアプリとビデオカメラで動画撮影を行った。撮影した動画は表情解析ソフト(Face Reader:Noldas社製、スウェーデン)で解析した。 得られた結果は、定型発達児において、ウェアラブル筋電計による計測では、被験食品の物性に応じて咀嚼の様相は変化が確認できた。また、ウェアラブル筋電計を装着した状態においても、表情解析ソフトにおいて、取り込み、開閉口状況、咀嚼運動の検出が可能であり、プリン、ペースト粥の押しつぶし咀嚼運動も認識可能であった。一方、定型発達児に比べ、発達障害児では、嚥下までの時間および咀嚼回数が早くなり、前頭面での1咀嚼サイクル軌跡の幅径が狭くなった。また、暦年齢以上に個人差が大きく、咀嚼運動の判定を行うには、個々の食品に対する平均的な咀嚼パターンの確定が必要なため、安定した咀嚼運動の記録が必要である。そのためには、被検食品の選択が重要であることも考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Covid-19の影響もあり、特別支援学校や放課後デイサービスなどへの入室に制限があり、被験者の獲得に当初の研究計画時よりも支障をきたしていた。しかし、2024年になって施設への入室に対して緩和傾向があるので、今後、被験者数を増やしていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、発達障害児の被験者として、ダウン症児と脳性麻痺児に絞ってサンプル数を増やしていく予定である。特に、ダウン症児は比較的、日常的に普通食を摂取している場合が多く、定型発達児に近い咀嚼機能を有している可能性が高いと、今までのサンプリングより考えている。 次に、解析手法について、表情解析装置から抽出された3次元データのうちx-y軸(前頭面観)のデータの信頼性が高いことから、自由咀嚼データのうち米飯、全粥食を中心に、まず、咀嚼運動の解析手法を確立する予定である。この結果をもとに、個々の典型的な咀嚼運動を判定し、咀嚼能力に対する判定方法を探求し、発表していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたよりも、Covid-19の影響で被験者のいる施設への入室に制限があり、謝金や交通費がかかっていないこと。および、使用しているソフトウェアが大幅に安価で入手可能であったことなどが残額が生じた主な要因である。次年度は、被験者を広く獲得することから謝金などの費用がかさむことと、また、これまでの研究結果から、新たに解析用のソフトウェアを追加する予定である。
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