研究課題/領域番号 |
22K11403
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
篠田 陽 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (80403096)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 後根神経節 / メチル水銀 / 感覚神経 / 神経新生 |
研究実績の概要 |
[本研究の目的] 後根神経節(DRG)において成体神経新生が起こるかどうかについては賛否両論が存在し、未だに不明な点が多い。DRGにおいて神経新生が起こるとすれば、そのメカニズム解明はDRG神経脱落に由来する後根神経節炎といった難治性疾病の治療に道を拓く。本研究では、DRGにおける神経新生が本当に起こるのかどうかを明らかにし、これが起こる場合その神経新生の神経科学的・生物学的基盤を明らかにすることを目的とする。 [研究成果の具体的内容] メチル水銀を投与した水俣病モデルラットを作製した。また分裂細胞のラベルを目的としてBrdUを複数回腹腔内投与した。投与開始後1週間毎にDRG凍結切片標本を作成した。凍結標本をBrdU特異的抗体および神経細胞マーカーで染色したが、これまでのところBrdU陽性の神経細胞は確認できていない。また、DRG内GFAP陽性細胞(アストロサイトおよびSGC)が神経幹細胞であるという仮説を立て、AAV6-mGFAP-CreおよびAAV6-CBh-FLEX-EGFPの2種のアデノ随伴ウイルスを作製し、これをDRGに直接投与することでGFAP陽性細胞特異的にEGFPを発現させ、これが神経細胞に分化するかどうかについて現在検討を行っている。 [研究成果の意義および重要性] DRGにおいて傷害依存的神経新生が本当に起こっているかどうかについてはまだ明確な証拠を得ていない。しかしながら単位面積あたりの神経細胞数はメチル水銀投与終了後掲示的に増加するという結果は以前の研究より複数回確かめられており、神経細胞が増殖している可能性が強く示唆されている。今回のBrdU投与条件においては神経新生が観察されなかったものの、今回の投与スケジュールとは異なる期間に細胞分裂・神経細胞への分化が起こる可能性が示された点において重要な知見が得られたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メチル水銀を投与したラットDRGにおいて、細胞分裂マーカーBrdUを用いた傷害誘導性神経新生を免疫組織化学により明らかにしようと実験を行なったが、これまでにBrdU陽性の神経細胞は見出されていない。これはBrdUの投与タイミング、投与量、投与後の固定のタイミングのいずれかあるいは複数に問題があった可能性が明らかになったという点において、新たな投与・量・固定タイミングを考慮する上で重要な知見となった。また同時並行に進めていたAAVコンストラクトの作製が完了し、これを用いた神経幹細胞探索も開始することができている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はBrdUの投与タイミング・投与量・投与後の固定タイミングを文献情報を参考に種々検討する。また、AAVを感染させたモデルラットDRGにおいて、神経幹細胞の同定を進めるとともに、現在ターゲットとしているGFAP発現細胞だけでなく、血管内皮細胞や上皮細胞といった、その他の細胞に特異的にEGFPを発現させるAAVを作製し、傷害誘発性DRG神経新生を引き起こしている神経幹細胞を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度の途中で研究室の引越しがあったため、一定の期間研究をストップせざるを得ない状況になったため。
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