研究課題/領域番号 |
22K11427
|
研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
村松 憲 杏林大学, 保健学部, 准教授 (00531485)
|
研究分担者 |
新見 直子 公益財団法人東京都医学総合研究所, 疾患制御研究分野, 研究員 (90405043)
玉木 徹 名古屋女子大学, 医療科学部, 講師 (30712814)
丹羽 正利 杏林大学, 保健学部, 教授 (90274985)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | リハビリテーション / 糖尿病 / 皮質脊髄路 / 赤核脊髄路 |
研究実績の概要 |
長期生存させた糖尿病モデルラットは大脳皮質運動野後肢領域を中心に運動野面積が減少し、その原因として腰仙髄に投射する皮質脊髄路線維に軸索萎縮や髄鞘の菲薄化が生じていることが知られている。本研究は前述した皮質脊髄路障害に伴う運動障害を改善するリハビリテーション開発を目的に、有酸素運動とスキル運動(運動学習を伴う複雑な全身運動)の効果を比較するものである。既に我々はスキル運動を行うことによって糖尿病によって減少した運動野面積の回復が生じることを明らかにしていたが、それがどのようなメカニズムによって達成されるのか不明なままであった。 そこで、令和4年度は運動療法を実施した糖尿病モデルラットの大脳皮質運動野を刺激した際に後肢から記録される筋電図(MEPs)を記録しながら、脊髄の部分切断を行い、切断部位に局在する下行路の後肢MEPs発生への影響を調べることにした。その結果、スキル運動を行なった糖尿病ラットのみ皮質脊髄路が局在する脊髄後索もしくは延髄錐体を切断したとしても振幅の小さなMEPsが残存し、脊髄側索背側を追加切除すると完全消失することが明らかになった。一方、有酸素運動を行なったラットや通常の飼育を継続したラットは脊髄後索切断をするだけでMEPsは完全に消失したため、スキル運動によって脊髄側索背側に局在する下行路が皮質脊髄路の機能を代償していることが明らかになった。そこで、可塑性が生じている神経線維の分子マーカであるリン酸化GAP-43の脊髄内分布を調べたところ、やはり脊髄側索背側に位置する赤核脊髄路と思しき部位に多数の陽性線維を認め、代償路は赤核脊髄路である可能性が高いことがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績で述べたようにMEPsの消失が脊髄側索背側の部分破壊によって生じるという明瞭な結果であったため、MEPsの変化を調べる実験だけで代償路の位置を絞り込むことができた。結果、可塑性に関連した分子マーカーの発現を網羅的に調べる必要がなくり、大幅に研究期間を短縮できた。
|
今後の研究の推進方策 |
令和5年度は予定通り、赤核脊髄路と脊髄のシナプス結合の強さを調べるために電気生理学的解析を進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
抗体の利用量が想定していたよりも少なくなったため。
|