研究課題/領域番号 |
22K11436
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研究機関 | 大阪電気通信大学 |
研究代表者 |
藤川 智彦 大阪電気通信大学, 医療健康科学部, 教授 (80321420)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 筋力評価 / 二関節筋 / 関節トルク |
研究実績の概要 |
筋力を計測するには関節トルクの数値を利用することが一般的である.しかし,関節トルクの数値は各関節の一関節筋の筋力を評価しているのではなく,二つの関節に同時に関与する二関節筋の筋力も含めて評価している.この二関節筋は二つの関節に跨る筋であり,一方の関節に協働的に働く時に,もう一方の関節に拮抗的に働く特性を有しており,実際の四肢先端に発揮する出力と関節トルクの数値を用いて算出した出力に差異を生じさせている.そこで,本研究は静的条件下における四肢先端出力を計測することにより,二関節筋を考慮した筋力評価が可能であることを提案している.しかし,現状の静的な最大努力の出力計測において,発揮する出力の大きさに応じて,被験者の体幹や四肢が微小に動き,さらに,その姿勢変化を含めた力の発揮しやすい方向が最大努力時の計測点となっている.また,二つの関節に跨る二関節筋の筋力を考慮すると,四肢全体が伸展するに伴って,伸展および屈曲方向に発揮する力は大きくなり,その垂直方向は小さくなる,逆に,四肢全体を屈曲するに伴って,伸展および屈曲方向は小さくなり,その垂直方向は大きくなる傾向がある.このような出力特性と計測点のばらつきが筋力評価の再現性に大きく影響している.そこで,2022年度は安定して計測できる上肢の静的姿勢を二関節リンクモデルを用いて,論理的および実験的検証によって求めることを試みた.その結果,上肢先端の出力計測において,最大努力の出力分布が最も均等になる姿勢(肘関節の内角度が60°となる姿勢)が明らかになり,動作筋電図学的解析結果においても,その結果に近い結果が得られた.これより,上肢の先端出力より筋力評価を安定しておこなうためには,静的な計測姿勢を肘関節の内角度が60°となる姿勢が有効であることが推察された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二関節筋を含めた筋力評価をおこなうための出力計測において,安定して計測できる上肢の姿勢をリンクモデルによる解析結果とヒト上肢における動作筋電図学的解析結果から推察することができた.しかし,予算の関係と半導体不足の影響を受けて,2022年度に申請したカメラシステムの購入ができなかった.このため,最大努力時中に発揮する力に応じて,微小に変化する姿勢の状況は計測できておらず,姿勢の微小変化に伴う上肢先端の出力変化の詳細な特徴抽出まで至っていない.しかし,上肢を用いた関節トルクと先端出力の関係の追加実験をおこない,計測した関節トルクの数値による先端出力と実際に発揮できる先端出力に差異が生じることを動作筋電図学的に明らかにした.
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今後の研究の推進方策 |
カメラシステムの導入が遅れているため,最大努力時中に発揮する力に応じて,微小に変化する姿勢に伴う上肢先端の出力変化の詳細な特徴抽出まで至っていない.2023年度中には納品予定であるため,至急システムを導入して,詳細なデータを得る予定である.このため,2023年度は下肢の筋力評価に着手する予定であったが,上肢の詳細な解析が終わっていないため,進捗が遅れることが推察される.そこで,上肢を用いた関節トルクと先端出力の関係の追加実験をおこない,計測した関節トルクの数値による先端出力と実際に発揮できる先端出力に明確な差異が生じることを明示できる詳細データを求めることを検討している.
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は半導体不足のため,カメラシステムの納品が遅れた.このため,2022年度の予算が余ることになったが,2023年度中にはカメラシステムを納品できる予定となっているため,納品後に順次研究を進める予定である.
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