研究課題/領域番号 |
22K11441
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
遠山 晴一 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (60301884)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ロコモティブシン ドローム(ロコモ) / Timed up and go test / ロコモ度 / 下肢キネマティクス / wearable sensor / 歩行解析 |
研究実績の概要 |
Timed up and go test(TUG)は移動能力の評価として広く用いられている。そこでロコモティブシンドローム(ロコモ)の重症度に関連する因子をTUG における下肢キネマティクスから同定した。 60 歳以上の地域住民140名を対象とし、ロコモ度テストおよびTUG を行なった。ロコモ重症度(非ロコモ、ロコモ度 1、2 および 3)はロコモ度テストを用いて評価した。TUG中の下肢キネマティクスの解析には、wearable sensor を用いた 3 次元歩行解析システム H-Gait を用いた。TUG中の起立期および着座期では股関節、膝関節、足関節の最大角速度を算出し、歩行期では各関節の最大角度と可動域を算出した。ロコモ重症度を目的変数、下肢キネマティクスを説明変数とし、年齢および BMIで調整した多項ロジスティック回帰分析を実施した。非ロコモ群を基準として、歩行中の膝関節可動域(オッズ比 0.92、P=0.009)および立 脚相膝関節最大伸展角度(オッズ比 1.19、P=0.001)がロコモ度 1群の有意な関連因子であった。これらに加え、立脚相股関節最大伸展角度(オッズ比 0.82、P=0.010)および起立期の股関節伸展角速度(オッズ比 0.94、P=0.024)がロコモ度 2 群の有意な関連因子となった。ロコモ度 3 群では、歩行中の足関節可動域も有意な関連因子であった(オッズ比 0.87、P=0.037)。以上よりTUG 中のキネマティクスより、ロコモ度1では膝関節機能の低下、ロコモ度2では股 関節機能の低下、ロコモ度3では足関節機能の低下が関連する因子であることを明らかになった。本所見はロコモ重症度により異なった予防および治療介入の必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地域住民を対象としたTUGにおける下肢3次元キネマティクス計測およびロコモ度評価をいわみざわ健康ひろばで開催される健康チェックに参加する年齢60歳以上の岩見沢市住民で本研究の参加への同意が得られた140名を対象として、H-Gaitを用いたiTUGを行った。したがって、TUGにおける下肢3次元キネマティクス計測およびロコモ度評価に必要なデータを入手していることから、本研究課題の進捗状況はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
TUGでの下肢3次元キネマティク解析のためのH-Gaitプログラム修正および正当性検証をするため、TUG課題には歩行動作に加えて坐位からの立ち上がり動作、方向転換動作、着座動作が含まれる。このため、H-Gaitシステムは歩行のみの下肢3次元キネマティクス解析のために開発されたプログラムであるので、方向転換操作によるグローバル座標系の再定義などのH-Gaitプログラムの修正を要する。これらのH-Gait修正プログラムの正当性検証には、健常者にiTUGを行ない、光学マーカを用いたモーションキャプチャーによる下肢3次元キネマティクスパラメータと比較することにより検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
TUGでの下肢3次元キネマティク解析のためのH-Gaitプログラム修正および正当性検証のための光学マーカを用いたモーションキャプチャーによる下肢3次元キネマティクスパラメータの計測が開始されなかったため、令和4年度での支出がなかったため。これらは次年度の支出となる予定。
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