研究課題/領域番号 |
22K11448
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
坂井 伸朗 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (60346814)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Musculoskeletal system / Human walking / Rocker function / Walking robot |
研究実績の概要 |
本研究はロッカーファンクションと下肢筋骨格構成による構造知の連携を,人工物のみによって構成された物理モデルにより再現することである.本研究ではコンピュータシミュレーションではなく実機で歩行させる事を目的としており、動力源や材料といった生体系と人工系との違いがハイライトされる。また、ヒト筋骨格構成とヒト歩行の再現に注力しており、バイオメカニズムやリハビリテーションといった分野においてヒト歩行を知るツールとしての役割も大きい。膝屈曲単関節筋については初号機より遊脚に必要要素であることが一貫して確認された。一方、フォアフットロッカー終了のための脚部前方送りでは各筋のバランスにより生成可能であるが、タイミングが実機ゆえにばらつきが生じる。そこで、膝屈曲単関節筋により、膝曲げ開始点を補助することにより安定した歩行が可能となった。また、初期荷重応答前の膝曲げタイミングの生成においても腓腹筋による膝伸展速度調整とそれに引き続く膝最大伸展からの戻りタイミングで構成することが可能であったが、これも実機故にばらつきが生じる。ここでも膝屈曲単関節筋による補助で動作タイミングを生成することが可能となった。なおこれらの動作は生体に置いても当該タイミングで筋電の発生が行われている。膝屈曲単関節筋は強力に力を常に発生させているわけではないが、タイミング生成など当該筋の重要性が確認できた。ほぼ全てのロッカーファンクション動作が行われている場合は、歩行時に床をたたく音が非常に小さくなる。現状駆動筋についてセンサレス力推定を組込んでおり、力の計測が可能であるのはロボットならではの要素と考えられる。アクチュエータと腱駆動モータは直列は位置され、動作としては遠心性収縮など各種機能が行われていると考えられるため、力計測の結果と併せて今後解析予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生体は人工物と比べて、材料やエネルギ変換原理が異なり、生体を人工物で実現しようとする場合、この違いから、人工物に置換えるときには見極めが必要であるが、本研究は生体をシミュレートする事が目的であるため、特に専用の設計が必要となる。特にフォアフットロッカー時には腰部高さを維持するために片脚足関節で体全体を持ち上げる必要があり、前年度開発の150gで0.5馬力発生するアクチュエータにより、シミュレートの幅が大きく広がった.さらに前脛骨筋は歩行相内で短時間にON-OFFのスイッチングを行うため、高速性が求められるが,本アクチュエータはそれらに追従可能な高いレスポンス(0.1s/180度以上)によりこれを実現した。特に本年度は歩行路の延長により定常歩行への移行を目指して開発を進めた。その時に問題となったのが歩数が増えるに従い、動作のばらつきが増幅されていくことであった。膝単関節筋の屈曲は当ロボット歩行シミュレータの遊脚生成において他では代用できない筋であったが、フォアフットロッカー終了から遊脚へ以降する際に膝曲げのタイミングを膝屈曲単関節筋によって補助することによって、このタイミングの安定化が可能であった。また過伸展になりがちな初期荷重応答においても前方接地前に適切な膝曲げ状態を生成する補助を行うことでタイミングの安定化が可能であった。この膝屈曲単関節筋は当該タイミングにおいて実際に筋電が発生していることが後から確認でき、筋電から発現されるヒト筋骨格歩行の合目的性をロボット歩行シミュレータにおいてあらためて確認した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は新たに開発した150g0.5馬力(30秒間)のアクチュエータにより,特にフォアフットロッカー時に機体全体を足関節で前足部の指示のみで持ち上げるという動作の実現を行った.おおよそ共振により歩行していると考えられるが,歩幅を増減させるのが意外に難しいことも分かってきた.そこで膝折れ防止と速度調整のため、能動駆動可能な腓腹筋と併せ、受動筋としてのヒラメ筋を積極活用することで、フォアフットロッカー時の膝折れ防止効果を得ると共に、膝屈曲単関節筋によるフォアフットロッカー終了で前方脚を落としつつ後方脚を前へ振出す動作においてばらつきが少なく安定した歩行が可能となった。現状はこれらの対応により、毎回確実に歩行が可能となっている。一方物理シミュレータ故,故障が予想しなかった新たな動作生成に繋がることもあり,この点は物理シュミレータならではの要素であると考えている.現在安定した歩行が可能となりつつある。そこで次のステップとして位置部部位を変化指せた場合にどのように歩行が変化するかを調査することが可能となり、非常に興味深い進行といえる。現状では、足趾の強さはある一定いかだと歩幅が小さくなり、これは遊脚初期の前方振出しが弱くなったためと考えられる。一方、足趾筋が強い方へはロバスト性が高く、靴などで足趾弾性が変化した場合でも影響が少ないのではないかと考えられるが、足趾力が強さによりどのようにこれを吸収しているか解析を進めたい。一方、足趾を完全剛結した場合は、足部長が長くなったこととなり、そのままの駆動タイミングでは歩行できなかった。また、歩幅に影響するのは腸骨筋力も大きく変わっており、こちらは直接的に歩幅に影響が出た。位置部を変更して動作への影響を見る試みはロボットならではであり、引続き検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度においても、社会情勢によりメカトロ製品や電子部品に関して納期の延長や品不足が続いており、十分に回復していない部分がある。モータにおいても、エンコーダの基板のボードの不足からモータ購入が制限されているため、次年度持ち越しとなった。
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