研究課題/領域番号 |
22K11464
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研究機関 | 川崎医療福祉大学 |
研究代表者 |
伊藤 智崇 川崎医療福祉大学, リハビリテーション学部, 准教授 (90587297)
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研究分担者 |
細川 貴之 川崎医療福祉大学, リハビリテーション学部, 准教授 (30415533)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 感覚統合機能 / 姿勢制御 / 環境適応 / バランス障害 / 転倒 |
研究実績の概要 |
視覚、前庭感覚、体性感覚への各種刺激を用いた新しいバランス評価システムの構築は、振動刺激装置が試作段階から完成に至らなかったため、まだ構築できていない状況にある。そのため、今年度は、既に構築済みの視覚への刺激に焦点を当て予備検討を行った。 臨床では、視覚への依存度を評価するための視覚条件として閉眼(視覚遮断)が用いられている。一方で、研究分野ではoptical flowや垂直軸の揺らぎ(垂直軸動揺)などを視覚への外乱刺激として用い、感覚情報の(再)重みづけの評価が行われている。後述の視覚外乱は、視覚によって引き起こされる加速度や傾斜情報の錯覚を利用したものであり、閉眼による視覚遮断とは性質がまったく異なる。視覚刺激の多様性と異質性がゆえに、どの視覚刺激が評価システムの刺激として適しているのかを判断することは難しく、閉眼、optical flowや垂直軸動揺の提示が姿勢制御に与える影響を調べる必要性があった。検討結果は、既知の通り閉眼時には開眼時と比較して身体動揺が大きくなり、また、垂直軸の左右動揺時にも静止時と比較して身体動揺が左右に大きくなる傾向が見られた。しかしながら、optical flowでは刺激あり時よりもなし時に身体動揺が増加する者もおり、一定の傾向が得られなかった。これらの結果から、3つの視覚条件はそれぞれが相互に関連しているとはいえず、刺激条件の違いにより姿勢制御への影響が異なるため、刺激の選定にはより詳細な検討が必要であることが知られた。 また、optical flowや垂直軸動揺のような視覚的な外乱刺激のオンオフを5回繰り返し行っ結果、刺激に対する適応反応が見られた。さらに、これを2セット行った場合には、刺激に対する身体動揺は1セット目よりも弱まることがわかった。これらのことから、視覚刺激のオンオフを繰り返す回数や視覚刺激への適応が生じにくい刺激の提示方法などについても今後検討を加える必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の計画では、今年度(令和5年度)は、経頭蓋直流電気刺激を用いて感覚統合機能の適応性と関連する脳領域を明らかにし、さらに、実際に若年者と高齢者の感覚統合機能の適応性の評価結果を比較することを計画していた。しかしながら、今年度中にバランス評価システムが完成しなかったことに加え、視覚刺激の内容や早期に生じる適応への対応といった新たな検討・解決すべき課題も見つかった。そのため、進捗状況としては遅れている状況にある。しかしながら、ヒトの感覚統合機能やその適応性については新たな基礎的知見が得らえる可能性も出てきているため、全体の研究計画を見直し進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
バランス評価システムで用いる各種刺激については、先行研究の知見がそのまま活かされない部分があり、検討すべき項目がいくつか生じている。視覚への刺激については、今年度行った予備的検討の結果から、システムに適した視覚刺激を見つけ出す必要があると考えている。この点に関しては、ヒトの視覚的外乱環境への適応性を知る上で重要なポイントになると考えられるため、令和6年度は本実験を行い詳細に検討する予定である。また、振動刺激装置の完成が遅れた場合や、optical flowのように振動刺激に対する一定の身体反応が得られなかった場合には、その対応としてバランスパッドを体性感覚への外乱刺激として用い、評価システムや実験プロトコルを変更する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)購入予定の振動刺激装置が、業者の都合によりまだ納品されておらず未購入となっている。そのため、次年度使用額が生じている。 (使用計画)振動刺激装置が納品された際に、次年度使用額分の助成金が使用される予定である。また、助成金は、多角的に身体動揺を測定するためのセンサの購入や、学会発表をするための旅費として今後使用する予定である。
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