研究課題/領域番号 |
22K11473
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
信太 奈美 東京都立大学, 人間健康科学研究科, 准教授 (90433185)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 車いすスポーツ / 頭頚部 / 動作分析 |
研究実績の概要 |
車いすスポーツは、下肢に障害がある人が主に上肢を用いて車いすを操作して競技を行う。車いすに座ることで骨盤以下の下肢が固定され、それにより頭頚部・上肢・上部体幹に動きが限定されている。車いすスポーツにおいて上肢の運動は着目されているが、頭頚部・上部体幹の動きにフォーカスした研究はなく、また車いすの接触時や転倒に着目した研究はない。本研究の目的は、車いすスポーツにおける頭頸部と上部体幹の動きを運動学的に分析し、競技中の車いすの転倒や衝突時にかかる頸部筋の反応について分析することである。さらに、競技中の衝突や転倒の頻度に着目し、頸部に掛かる負荷について検討することである。初年度は測定機器であるウルティウムモーション(酒井医療、日本)を購入し、それを使用して予備実験を実施した。 今年度は、詳細でより適切な分析を目指して計測方法の再検討を行った。計測機器と計測場所について変更を行い、VICON 3D motion analysis device (Vicon Nexus)を使用して研究室内で競技中の車いすの衝突を再現する方法に変更した。再度健常者を対象とした予備実験を行った後、健常者に対する予備実験を得て研究倫理申請書の作成に至った。12月に研究倫理申請書を提出したが、車いす使用者を衝突させるという点で安全性や研究参加者の条件(日常的にこの競技を行っている選手に限る)等の検討が必要であり、承認までに修正を重ねることで時間を要した。来年度は、計測し結果を分析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
遅れている理由は計測方法の再検討を行ったことと、研究倫理の承認までに時間を要したことである。当初は関節角度をウルティウムモーション(酒井医療、日本)、筋電計 Delsy(DELSYS Japan)を使用し、実際の競技環境のなかで計測をする予定であった。初年度に機器を購入し、健常者を対象に計測を重ねる中で関節にかかる負荷を算出するための方法を再検討した。計測は研究室内で競技中の車いすの衝突を再現する方法に変更し、使用機器をVICON 3D motion analysis device (Vicon Nexus) に変更して関節角度を取得、筋電計は変更せずにDelsy(DELSYS Japan)を使用して、胸鎖乳突筋、僧帽筋、斜角筋、胸部脊柱起立筋に筋電計を貼付し、衝突時の頸部筋の反応開始時間、筋活動の大きさについて計測する。また、これらのデータを SIMM program (interactive skeletal muscle modeling software) を使用してモデルを作成し算出することとした。その後、12月に研究倫理申請を行ったが、研究内容に障害のある人の研究の参加と車いすの衝突があり危険な要素を含むことで、承認までに内容の修正に数か月の時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度5月に研究倫理承委員会の承認を得た。1)車いす競技における頭頸部と上部体幹の動きの分析、2)競技中の衝突時にかかる頸部の反応の分析の計測を6か月間で実施する。実施内容は研究室内で競技中の衝突を再現し、車いす衝突時の頸部の屈曲・伸展・回旋角度と胸椎前傾・回旋角度を計測し、また同時に胸鎖乳突筋、僧帽筋、斜角筋、胸部脊柱起立筋に筋電計を貼付し、衝突時の頸部筋の反応開始時間、筋活動の大きさについて計測し、SIMM program (interactive skeletal muscle modeling software) を使用して頸部に掛かる負荷について分析する。この計測は研究室内にて競技中の衝突を再現したものであり、また中速と低速にて安全に行っているため実際の競技中の車いすの衝突時の衝撃や転倒の衝撃とは異なる。その違いを考慮するために、上記の計測時の衝突と実際の競技の中の衝撃をそれぞれ衝撃ロガーにて計測し、研究室内での衝突実験との実際の競技中の衝撃の大きさを比較検討する。最後に、3)競技中の衝突や転倒の頻度を調査するため、実際の競技大会中における衝突や転倒の頻度とその状況を動画に記録し、競技別に競技特性(クラスとポジション)を踏まえて検討する。この調査は9月に行われる2024パリパラリンピックの映像を使用する。今年度に一度研究結果をまとめて学会にて発表をする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は計測方法の再検討と研究倫理の承認を行っていたため、支出が生じなかった。研究機器は所属機関が所有するものを使用することに変更した。また、研究の進行がやや遅れたているため、次年度に使用する見込みがあったため次年度に使用額が生じた。
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