研究課題/領域番号 |
22K11484
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研究機関 | 新潟医療福祉大学 |
研究代表者 |
佐藤 晶子 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 准教授 (70593888)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | チアミン(ビタミンB1) / グリコーゲンローディング / 食欲不振 |
研究実績の概要 |
本研究では、糖質代謝の重要なビタミンに位置づけられているチアミンに関して、グリコーゲンローディングに新たな知見を提供することを目的として、大量の糖質が組織内に流入する場合、短期間の体内チアミン量の低下によって①潜在的な食欲不振が顕在化し、摂食量が低下するのか ②PDC機能の低下により、糖質のミトコンドリアへの流入は抑制されるのか ③筋グリコーゲン蓄積は抑制されるのか、促進されるのかという3つの課題を動物実験にて明らかにする。2022年度は①の課題を解明するために、絶食を用いて食欲を亢進する状況を誘発し、その後の再摂食時の摂食量によって食欲を評価した。雄性Wistar系ラットを普通食を摂取する群(コントロール群)と普通食からチアミンを欠乏させた飼料を摂取する群(チアミン欠乏食群)に分け、それぞれの飼料を水分とともに1週間自由摂取させたのち、24時間絶食させた。その後、各群のもとの試料を再摂食させ、再摂食開始から2時間後と4時間後の摂食量を確認した。その後解剖を行い、血液、骨格筋、肝臓を採取した。なお、研究代表者はこれまでの研究により、1週間のチアミン欠乏食の摂取が体内チアミン量を有意に低下させることを確認している。再摂食開始後2時間後の摂食量には、いずれのタイミングにおいても両群間に有意な差はみられなかった。再摂食後の解剖時の血糖値にも群間差は見られなかったが、血中乳酸値はコントロール食群(4.6±0.2mmol/L)よりもチアミン欠乏食群(5.8±0.3mmol/L)の方が有意に高かった(p=0.003)。以上の結果から、1週間のチアミン欠乏食の摂取は、ラットの絶食後の摂食量には影響を及ぼさなかったが、血中乳酸値の上昇が観察されたことから、糖質のミトコンドリアへの流入を抑制する可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
現在までに完了しているのは、課題①を明らかにするための実験1の一部である。2022年度はこのほかに、摂食関連ホルモン(インスリン、レプチン、グレリン)の血漿濃度や、視床下部における摂食関連分子のリン酸化状態を確認するだけでなく、再摂食時に摂取させる飼料について、もとの試料ではなく両群ともに普通食を摂取させた場合についても検討する予定であった。また課題③の一部として、骨格筋および肝臓におけるグリコーゲン量を測定する計画であり、実験器具や装置、消耗品の準備も整っていた。しかしながら、研究代表者の体調不良により、半年以上研究の実施が不可能となり、すべての学会発表も断念せざるを得ない状況となった。
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今後の研究の推進方策 |
すでにサンプルとして保存している血液、骨格筋、肝臓における残りの測定をすすめ、採取を見送っていた視床下部における関連分子の分析を進める。また、これまでの結果を受け、再摂食時の飼料を両群ともに普通食とするパターンについて検討するか、慎重に判断する。2023年度は課題③を明らかにするため、実験2として安定同位体13Cグルコースを用いて糖質の動態や代謝を呼気ガス分析にて確認し、血液、骨格筋、肝臓、脂肪組織、脳における糖質関連代謝物質を確認する計画であったが、前述の作業を優先的に行い、実験2は実験1の進捗を確認しながら可能な範囲で準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験1に必要な装置、消耗品、試薬の購入は進めていたが、前述のとおり研究代表者の体調不良により、完了できたのは実験1の一部にとどまったため、科学研究費の使用も予定通りに進まなかった。今後、すでに保存しているサンプルの分析や実験1で見送ったサンプルの採取を進める中で必要な消耗品の購入を行い、実験2で使用する動物、飼料、試薬、消耗品の購入のほか、学会発表の旅費としての使用も計画している。
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