研究課題/領域番号 |
22K11491
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
吉田 康行 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 招聘研究員 (80409705)
|
研究分担者 |
西村 拓一 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (80357722)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | バイオメカニクス / 競技社交ダンス |
研究実績の概要 |
脳機能画像解析に特化していたSPM (Statistical Parametric Mapping)を身体運動のバイオメカニクスの時系列データに適用させることを試みた.対象となるデータは主に申請グループで研究実績のある競技社交ダンス動作であった.そして,2022年度の目的はSPMの解析を実際に行うことであった. 計測済である世界チャンピオン組と国内上位選手群の競技社交ダンスの動作データに対してSPM解析をおこなうことができた.オープンソースとなっているSPM解析用のソフトウェアをダウンロードし,パーソナルコンピュータに設定した.そして,動作のデータの中からどのパラメータに対してSPM解析をおこなうべきかの検討をおこなった.身体動作のデータには剛体リンクモデルが用いられている.そのため多くの関節のデータが算出されている.それに加え,時間で微分されたデータも多く算出されている.そこで今回は身体モデルを簡易に表現した全身体の質量中心を用いて動作の理解を容易にするようにした. SPM解析の結果,競技社交ダンスの世界チャンピオン組は国内上位選手群と比較すると身体質量中心の高さ変化の時系列データにおいて有意に異なる時間帯があることが明らかとなった.これまでの解析方法では時系列データの「最小値」や「最大値」といった僅か数箇所の特徴点のみを検定に利用していたが,SPM解析では全てのデータを無駄にせず,検定に利用できた.この新たな知見は現場の選手や指導者に有益であると考えられる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度の目的はSPM解析を実際に行うことであった.そして,この目標には到達したといえる.コロナ禍の影響のため,見通しがたちにくく,計画通りに進めることができるかどうか不安な部分もあった.しかしながら,コロナ禍の影響を受けずに進めることができた. 業績として英文のオープンアクセスの査読付き論文1本が出版され,国内学会発表が1件であった.論文はこれまでの計測済の競技社交ダンスの動作データを解析したものであった.この論文にはSPM解析が含まれていない.しかし,剛体リンクモデルを用いた身体動作の解析には多数のパラメータあり,SPM解析の対象となるパラメータを絞り込むのは容易ではない.そのため,SPM解析をおこなう前に解析対象のパラメータを絞り込む作業が不可欠となる.この絞り込む作業において今回の論文は十分に貢献できたといえる.学会発表はSPM解析をおこなった内容で発表した.こちらも計測済の競技社交ダンスの動作データを解析に用いた.対象のパラメータは動作時の全身体の質量中心の高さ変化であった. SPM解析の結果,特定の時間帯に有意差が現れていた.これらの研究業績は予定していた計画に沿って進めた結果であるため,目標には到達できたと考えられる.
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度の目的は新たな競技社交ダンス動作,並びに熟練した技能が必要な動作の計測を行い,解析し,成果発表を行っていくことであった. また,可能であれば国際学会での発表も行っていくことであった.現在,研究分担者と協力し,新たな競技社交ダンスの動作,並びに熟練した技能に関係のある身体動作を計測する計画を進めている.そして,国際学会にて成果発表を行う予定をしている.したがって計画を変更することなく進めていける.更に,2023年度で難しいのはコロナ禍の影響であることを予想していた.これは2023年度に影響は及ばないと考えられる.
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が発生している.予定ではパーソナルコンピュータやモニタを購入予定であった.しかし,これらの機材は他の予算で購入できた.そのため次年度使用額が生じた. 今年度はソフトウェアの購入や備品の購入を計画している.また,追加でパーソナルコンピュータが必要な場合は購入する計画である.
|