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2023 年度 実施状況報告書

種々のニューロモデュレーションを含んだ練習がスポーツスキルの運動学習に及ぼす効果

研究課題

研究課題/領域番号 22K11504
研究機関東海大学

研究代表者

山田 洋  東海大学, 体育学部, 教授 (30372949)

研究分担者 金子 文成  東京都立大学, 人間健康科学研究科, 准教授 (00344200)
田中 彰吾  東海大学, 文化社会学部, 教授 (40408018)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード非侵襲的脳幹賦活 / 迷走神経 / 身体知 / モーションキャプチャシステム / 感覚入力-出力系 / ヘッドマウントディスプレイ / 固有受容器 / 一人称映像
研究実績の概要

本研究の目的は、種々のニューロモデュレーションを含んだ練習がスポーツスキルの運動学習に与える効果を検討することである。感覚入力-出力系へのニューロモデュレーションとして、1.仮想現実空間内における一人称的運動観察と筋感覚運動イメージ想起を併用した練習を実施する運動イメージ想起課題(主に視覚野、第一次運動野への働きかけ)、2.通常の練習に非侵襲的な迷走神経への経皮的電気刺激(Transcutaneous Vagus Nerve Stimulation: tVNS)を加えた練習を実施する非侵襲的脳幹賦活課題(主に脳幹、自律神経系への働きかけ)を設定する。本研究の仮説は、「ニューロモデュレーションを含んだ練習をした群は、しない群と比較して運動学習の効果がより早く大きくなる」である。課題1は、サッカーのボールジャグリングを対象として、課題2は、バドミントンのサーブを対象として介入練習を行い、練習の効果を検討しつつ、全ての練習期間の前後でパフォーマンス評価、バイオメカニクス・生理学的検証、および心理学・哲学的検証を行う。
これまでに我々は、サッカーボールジャグリング、バドミントンバックハンドストロークを対象に、バイオメカニクス的手法を用いて、スキルの評価方法を確立している。サッカーのボールジャグリングについては、通常の練習に一人称映像および三人称映像を用いた映像フィードバックを組み合わせた練習を行わせ、前者の練習法がパフォーマンスを向上させることを見出している。バドミントンバックハンドストローク時に適用する非侵襲的脳幹賦活課題については、迷走神経刺激の有用性を検討するために予備実験を繰り返し実施し、手法の確立を試みている。さらに、上肢の微細なコントロールと集中力を必要とする新たな運動への適用についても予備実験を繰り返し、こちらに対する介入実験の準備を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

申請課題の倫理審査については、所属機関である「東海大学『人を対象とする研究』に関する倫理委員会」の承認を得ている(承認番号23087)。
課題1のサッカーのボールジャグリングについては、これまでの研究において、そのスキルの評価方法を提案している(佐藤ら, 2021)。並行して、バレーボールのオーバーハンドパス(Ozawa et al., 2022)、野球捕手のキャッチング(澤井ら, 2023)、ピッチング(山田ら, 2023)をはじめとする「巧みさ」を必要とするスポーツ動作についての研究を行い、スポーツスキルの運動学習を評価するための課題、およびその評価方法は確立されている。介入となる「仮想現実空間内における一人称的運動観察と筋感覚運動イメージ想起を併用した練習」については、ヘッドマウントディスプレイを用いた一人称的運動観察を組み込んだ練習を行わせて、バレーボールのオーバーハンドパスのスキル・習熟度について検討を行い、運動イメージが向上するという結果を得ることができた。さらにサッカーのボールジャグリングについても同様の検討を行い、介入によりパフォーマンス(持続回数)が向上するという知見を得ている。
課題2に関しては、バドミントンのバックハンドストロークについて、その動きや操作特性に焦点を当ててバイオメカニクス的な検討を繰り返し実施し、努力度や習熟度の違いがシャトルの速度や正確性に与える影響や、それらを生み出す新たな生理学的・神経科学的な知見を得ている(清水ら, 2023)。介入となる「通常の練習に非侵襲的な迷走神経への経皮的電気刺激を加えた練習」については、専用装置(経皮的耳介迷走神経刺激装置MODEL0125, ミユキ技研社製)を用いた予備実験を実施し、心拍数や脳活動に対する効果についてデータを採取・分析し、介入実験へ取り入れる準備をしている。

今後の研究の推進方策

課題1は、サッカーのボールジャグリングを対象とした一人称的運動観察を組み込んだ練習の効果を確認している。今後はこのデータをまとめ、研究成果を発信していく。課題2は、バドミントンのバックハンドストロークへの介入実験を進めていく。三年目の最終年度となる今年度は、課題1、課題2ともに実験を一通り終えて、研究成果の公表へ繋げていきたい。
課題1に関しては、これまで得られたデータをまとめるとともに、併せて、中期、長期の介入実験についても検討していく。「仮想現実空間内における一人称的運動観察と筋感覚運動イメージ想起を併用した練習」について、研究計画においては電気刺激による筋への刺激を考えていたが、実際のスポーツ場面を想定して、別の刺激についても検討する。前述のサッカーのボールジャグリングにおける実験において、映像に併せて検者が被験者の足にボールを当てていたが、今後はこちらも実施しつつ、固有時受容器に働きかけ、筋感覚フィードバックと視覚フィードバックを組み合わせるような、スポーツの実践に即した新たなフィードバックについても開発を進める。
課題2に関しては、バドミントンバックハンドストローク中に、tVNSを適用する練習方法を確立して、最終実験を実施する。着座させた被験者に、バドミントンのサーブを模した設定で、ターゲットとなるカゴにシャトルを打ち込むプロトコールを用いる。ランダムにtVNS、Sham-tVNS群(偽tVNS群)の2群に振り分けた被験者に対し、パフォーマンス(平均的当て回数)を基に練習効果(運動習熟)について検討する。手法の即時効果について、次いで、中期、長期の介入実験についても検討していく。並行して、検証実験として、上肢の微細なコントロールと集中力を必要とする新たな運動への本手法の適用し、tVNS中に脳波・心拍数を測定して、tVNSの効果および精度の検証を行う。

次年度使用額が生じた理由

前年度の繰越金が多かったこと、および予定していた実験を実施しなかったことにより人件費・謝金がなかったことが、次年度使用額が生じた理由である。前年度の繰越金のおよそ半分が残額として次年度使用額となるが、こちらは、最終年度に実施する実験とその分析に対する人件費・謝金に充当する。
今年度の予定変更の内訳について、「人件費・謝金」に関しては、当初予定していた実験を取りやめ、被験者・分析者の人件費を使用しなかったため、大幅な残額となった。残額分を「物品費」として、データ分析用のコンピュータや実験用の機器・消耗品を購入した。「旅費」については、学会参加・発表や資料収集のための出張が計画より多くなったこと、および円高や物価上昇により交通費や宿泊費等が高かったために支出が増額となった。「その他」についても、論文掲載料、英文校正等の費用が想定より高くなり、支出が多くなった。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 4件)

  • [雑誌論文] Effect of number of college baseball pitching on movement, performance, physical strength, physiological, and psychological functions of pitchers2023

    • 著者名/発表者名
      Yamada Hiroshi、Ogawara Keita、Uchiyama Shuichi、Ito Eiji、Miyazaki Michinori、Miyazaki Seiji
    • 雑誌名

      Japanese Journal of Physical Fitness and Sports Medicine

      巻: 72 ページ: 201~213

    • DOI

      10.7600/jspfsm.72.201

  • [雑誌論文] 野球捕手の捕球時におけるミット制御2023

    • 著者名/発表者名
      澤井拓実 ,山田洋 ,小河原慶太,宮崎誠司,伊藤栄治
    • 雑誌名

      バイオメカニズム

      巻: 26 ページ: 127-136

  • [雑誌論文] Speed Accuracy Trade Off からみたバドミントンバックハンドドライブの技術特性2023

    • 著者名/発表者名
      清水幹弥, 山田洋, 植村隆志, 伊藤栄治, 八田有洋
    • 雑誌名

      バイオメカニズム

      巻: 26 ページ: 137-148

  • [学会発表] バドミントン熟練者と非熟練者におけるバックハンドドライブ中の上肢運動の相違2023

    • 著者名/発表者名
      清水幹弥,山田洋,小澤悠,宮﨑誠司.
    • 学会等名
      第30回よこはまスポーツ整形外科フォーラム
  • [学会発表] Effects of immediate feedback on tackle technique in rugby using 3-dimensional motion analysis: A case study.2023

    • 著者名/発表者名
      Norikazu Y.,Shogo Y., MikiyaS., Hiroshi Y., Yuta K., Kazuho N., Hideyuki K.
    • 学会等名
      The 28th Annual Congress of the European College of Sport Science
    • 国際学会
  • [学会発表] The characteristics of distribution of volleyball passing for several distances2023

    • 著者名/発表者名
      Ozawa Y., Nakamura S., Yamada H., Miyazaki S.
    • 学会等名
      The 28th Annual Congress of the European College of Sport Science
    • 国際学会
  • [学会発表] Changes muscle activity when manipulating the difficulty of the serve.2023

    • 著者名/発表者名
      Ryosuke F. Yu O., Hiroshi Y.
    • 学会等名
      The 12th Asian-Pacific Conference on Biomechanics
    • 国際学会
  • [学会発表] Influence of subjective effort level on badminton shot accuracy and movement2023

    • 著者名/発表者名
      Shimizu M. Ozawa Y. and Yamada H.
    • 学会等名
      The 12th Asian-Pacific Conference on Biomechanics
    • 国際学会
  • [学会発表] 異なる熟練度の打動作における打球速度調節方略―バドミントンバックハンドドライブに着目して―2023

    • 著者名/発表者名
      清水幹弥,小澤悠,山田洋.
    • 学会等名
      第44回日本バイオメカニズム学術講演会
  • [学会発表] バドミントンショットにおけるショット方向のばらつき2023

    • 著者名/発表者名
      清水幹弥,小澤悠,古屋良祐,山田洋.
    • 学会等名
      第6回身体科学研究会
  • [学会発表] 熟練者と未熟練者におけるバックハンドドライブのショットパフォーマンスの比較2023

    • 著者名/発表者名
      清水幹弥,山田洋.
    • 学会等名
      第7回日本バドミントン学会

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公開日: 2024-12-25  

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