研究課題/領域番号 |
22K11533
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研究機関 | 了徳寺大学 |
研究代表者 |
越田 専太郎 了徳寺大学, 健康科学部, 教授 (60532637)
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研究分担者 |
石井 孝法 了徳寺大学, 教養部, 客員教授 (60735041)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 頭部外傷予防 / 武道 / ウェアラブルセンサ |
研究実績の概要 |
本研究は、実際の柔道自由練習における頭部への衝撃を定量化し、熟練者と初心者の実態を比較することで、柔道の熟練度が稽古時の頭部衝撃頻度および衝撃負荷に与える影響を明らかにすることを目的としている。これまでに大学生柔道熟練者5名、初心者4名の協力を得ており、28セッション中、閾値(>合成加速度10g)を超える頭部衝撃について、熟練者群で111例、初心者群で43例を確認している。また、最大合成加速度の中央値[四分位範囲]は、熟練者群で13.3g[5.6]、初心者群で13.2g[6.8]であり、最大合成角加速度の中央値[四分位範囲]は、熟練者群で858rad/s^2[530.5]、初心者群で858rad/s^2[782]であった。頭部衝撃の大きさは比較的低値の15g以下及び1500rad/s^2以下に集中しており、現在までの結果から、初心者における頭部外傷リスクが熟練者より高いことを示す根拠は得られていない。 柔道練習時の頭部衝撃を実測した研究は極めて少ない。さらに渉猟した限りでは、実際の自由練習において頭部衝撃を熟練度別に定量的に比較した研究は存在しない。これまでの本研究の知見は、柔道で生じる頭部衝撃の頻度や衝撃レベルに、熟練度による顕著な差はないことを示唆している。一方で先行研究では、重症頭部外傷のリスクは初心者で高くなることが示唆されており、柔道における頭部外傷予防対策を講じる上で、技能レベルの影響を考慮することが重要であると考えられている。この点から、さらに本研究を進める必要がある。本研究ではマウスガード型センサを活用しており、今後頭部外傷の早期発見や見逃し防止、さらには柔道の安全性評価システム構築への応用が期待され、社会貢献に資する可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の進捗が当初の計画を下回った主な理由は、対象の練習参加率が予想に反して低調であったこと、また使用した計測機器に不具合が生じたことである。 対象の練習参加が思わしくなかった背景には、学生らの学業負担や柔道という種目の特性が影響したと考察している。柔道は激しい身体接触を伴うため、けがや体調不良で練習を控える機会が多く、それが参加率低下につながった。加えて、試験や課題などの学業に追われ、練習を休まざるを得ない事態も発生した。こうした事由が重なり、予定した測定日時の調整も難航し、データ収集に支障をきたした。 さらに、頭部衝撃を計測するマウスガード型センサにも重大な不具合が見受けられ、特に充電を制御するファームウェアの不具合が続発した。メーカーに機器交換を依頼したものの、納入に時間を要し、測定の中断を強いられた例も生じた。 こうした対象者と機材の両面にわたる問題が重なり合い、研究には若干の遅れが生じることとなった。しかし、次年度の中頃には測定は完了し、研究を終了できる見通しである。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として、対象者への配慮と計測機器の綿密な準備を進め、より慎重かつ迅速に研究を進める計画である。夏季休暇期間まで測定期間を延長し、新たな対象の募集を含め、データサンプル数の増加に務める。同時にその後の測定分析を迅速に実施するための準備も同様に進める。国内外への発信(学会抄録作成や論文作成)の準備も併せて進める。計測機器の準備については、メーカーとのコミュニケーションを一層強化し、機器の適切な取り扱いや不具合発生時の対応方法について十分な情報を収集する。メーカー側との緊密な連携体制を構築することで、機器の安定的な運用を図る。一方で、対象者への配慮に関しては、測定への参加が過度の負担とならないよう細心の注意を払う。休養日や練習時間、学業との両立などを勘案し、対象者個々のスケジュールを十分に加味する。綿密なコミュニケーションを心掛け、測定日時の調整を丁寧に行っていく。対象者の安全と健康を最優先に考え、無理のないスケジュール立案に努める。 こうした機器と対象者への十全な対応を行うことで、今回の研究目的である画像データの取得も含めた頭部衝撃暴露の実態解明と、柔道熟練度による影響の明確化に向けて、着実に研究を推進できるものと期待される。頚部筋力測定や授業内測定については今後の課題とし、今回は中心課題とはしない。サンプル数を十分確保できれば、データに基づく解析により、頭部衝撃に関連する環境要因を明らかにすることが可能となる。上記の推進方策により研究目的の達成を想定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由として、最初に対象者の参加率の低下が挙げられる。 当初想定された参加率を下回ったことが使用額の減少につながっている。対象者の学業状況やケガなどの事情により、練習参加を見送るケースが多発したため、新たな対象募集を加えること、さらに対象者層の選定の一部見直しを検討している。また、測定機器の不具合による実験の中止も影響をしている。予期せぬ機器の不具合が発生し、一部の測定を中止せざるを得ない状況が生じた。これにより、本来対象者へ支払う予定だった謝礼や交通費支出の削減につながっていた。 来年度は、対象者の数を増やし、データ収集期間を夏まで継続することを計画している。これにより、より広範なデータを得ることができ、研究の質と精度を向上させることが期待できる。対象者層選定を一部見直し、参加率の向上を図ります。また、測定機器のメンテナンスと事前チェックを徹底することで、実験中止のリスクを最小限に抑える予定である。
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