研究課題/領域番号 |
22K11537
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
川田 茂雄 帝京大学, 医療技術学部, 准教授 (20376601)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 二酸化炭素分圧 / 骨格筋 / 酸塩基平衡 |
研究実績の概要 |
本研究は生体内での局所的な二酸化炭素分圧の上昇が骨格筋細胞にどのような影響を及ぼすかを明らかにすることを目的としている。本年度は、マウス筋芽細胞由来のC2C12細胞株を用いてin vitroでの検討を行った。C2C12細胞の培養は通常培養では生体内の局所的二酸化炭素分圧を模して5%二酸化炭素環境下で行うのが一般的である。本研究では二酸化炭素濃度を上昇させた培養環境では細胞増殖能が亢進することを確認している。しかしながら、二酸化炭素分圧上昇は培地の酸塩基平衡を酸性側に傾かせることから、二酸化炭素そのものが細胞増殖能を亢進させるのか、あるいは培地の酸塩基平衡が影響しているのかは不明である。そこで、本研究の二酸化炭素曝露によって生じる酸塩基平衡の変化量を確認し、その値と同じ培地で培養を行ったところ、細胞増殖能が亢進することを確認した。このことは、二酸化炭素分圧上昇によって生じる細胞増殖能の亢進の一部は細胞培養時の酸塩基平衡の変化が貢献している可能性があることを示唆している。これまで細胞研究で一般的に使用されているCO2インキュベーターは完全に気体を密封しているわけではなく、インキュベーター内のCO2濃度に「ゆらぎ」が生じている。この「ゆらぎ」が結果に影響を及ぼすことも考えられることから、本年度は培養時の気体の種類や濃度を任意に設定し、その濃度を完全に一定に維持できる新たな細胞培養装置の開発を行った。これにより、市販の細胞培養用のCO2インキュベーターよりも詳細な気体の制御を可能とする研究方法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、細胞培養時の気体環境を変化させる必要がある。培養に使用される一般的なCO2インキュベーターはCO2濃度を検知しながら自動でCO2が補給される仕組みである。しかしながらCO2インキュベーターは完全な密封ではないため、インキュベータ内のCO2濃度は実際は細かい波状変化を示す。気体の細胞への影響を検討する場合は、厳密にはこのような気体濃度の波状変化がないほうが好ましい。そこで本研究では細胞培養チャンバー内を完全に密封し、内部の気体濃度を厳密に制御できる新たな培養装置を開発した。また、当初予定していた培地の酸塩基平衡の変化に対する細胞増殖能への影響も明らかにすることができたため、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は細胞培養時の二酸化炭素分圧および酸塩基平衡の変化が細胞増殖を亢進するという現象を掴むことができた。しかしながら、細胞増殖能亢進の分子メカニズムが両刺激で同様であるかどうかは不明である。また、細胞増殖だけではなく、分化能にどのような影響を与えるかも不明である。今年度は、分子メカニズムを明らかにするための実験を予定通りに進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
in vitroの研究ではin vivoでの細胞生存環境を模すために細胞に対してストレッチ刺激を課す予定であり、本年度はその実験機器を購入する予定であった。しかしながら、研究の遂行に際して新しい細胞培養装置を開発する必要性がでたため、そちらを優先したことにより本年度はストレッチ刺激装置の購入を見送った。今年度は予定通りに研究が進行していることから昨年度購入をしなかった細胞ストレッチ刺激装置を購入する予定である。
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