研究課題/領域番号 |
22K11549
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
嶋崎 達也 筑波大学, 体育系, 助教 (20550057)
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研究分担者 |
菅原 順 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究グループ長 (00357261)
竹井 裕介 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (00513011)
鈴木 啓太 名古屋学院大学, スポーツ健康学部, 講師 (50780227)
竹村 雅裕 筑波大学, 体育系, 准教授 (60375459)
古川 拓生 筑波大学, 体育系, 准教授 (80274869)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ラグビー / コンディショニング / オーバートレーニング |
研究実績の概要 |
慢性的なトレーニングとリカバリーの不均衡は身体的疲労とともに精神的疲労も招来する。精神的疲労はトレーニングに対するモチベーションを低下させ、トレーナビリティ(トレーニング効果)の低下をもたらす。パフォーマンスの低下はもとより、病的状態(オーバートレーニング症候群)に進行するリスクもある。この回避には、心身の疲労状態をモニタリングし、トレーニングを計画・実行・改変していく必要がある。本研究では、ラグビー競技選手を対象にした効果的なコンディショニング手法の提案を目指す。具体的には、日々のトレーニングにおける運動強度(質)と持続時間(量)との積からトレーニングロードを算定するとともに、疲労度指標として心理指標や起床時心拍数などのある程度確立された指標に加え、動脈脈波解析から得られるメンタルストレス指数および薄膜MEMSアクティブミオグラムで計測される筋疲労度を計測する。 本年度は、GPSによって取得される走行距離及び移動速度からトレーニングロードを算定し「インプットシグナル」とした。一方、「アウトプットシグナル」はトレーニングセッション毎の自覚的疲労強度とトレーニング時間との積を求め加算し、自覚的疲労強度を得ることとした。 通常のトレーニングでは、強度よりも走行距離が自覚的疲労強度を有意な相関関係を示す一方、試合ではその関係性に乖離が認められた。近年、GPSを活用した走行距離や移動速度の評価は普及しているが、ラグビー特有のスクラムやモールなど、移動を伴わずに筋力発揮している状況では評価が難しいことが、改めて明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、足底への荷重の連続計測技術を活用し、下肢の仕事量の定量化を試みようとしたが、ウェアラブル化が進まず、GPSで取得される位置及び移動情報と3軸加速度の情報のみから、生理的負担度を定量評価できるか検証することとした。筑波大学ラグビー部に所属する部員5名を対象に日々のトレーニング中の走行距離、速度、加速度をGPSで取得した。併せて、トレーニングメニュー毎に実施時間とRPE(10段階)を記録し、両者の積の総和をセッションRPE(sRPE)として算出した。 フォワード(FW)の選手とバックス(BK)の選手に分け、GPSより得た1日の総走行距離ならびに高強度での走行距離とトレーニングロード(TL:トレーニングセッション毎に自覚的疲労強度とトレーニング時間の積を算出したのち加算)との関連をwおみると、総走行距離及び高強度での走行距離はBKの選手のほうが高値であったが、ポジションに関わらず総走行距離とTLとの間に有意な正相関が認められた。一方、高強度での走行距離とTLとの間には有意な相関関係は認められなかった。 総走行距離とTLとの関係性を、通常のトレーニングと試合とで比較すると、通常のトレーニングに比し、試合では長い距離を走り、かつTLが高いことが明らかとなった。さらに、関係性もトレーニング時のデータから得られる回帰直線から乖離することが明らかとなった。試合ではコンタクトプレーが頻発し、走行距離には反映されない身体的疲労が生じていたことが示唆される。推定精度の高いGPSデータの解析法を開発する等、乖離を埋める工夫が求められる。
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今後の研究の推進方策 |
ラグビー特有のスクラムやモールなど、移動を伴わずに筋力発揮している状況での身体負荷の評価法を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していたポータブル電源は実験場所の都合で不要となり購入を見送った。対面での研究打ち合わせのため旅費を計上していただが、オンラインミーティングに切り替えたため、支出がなかった。そのほか、各研究者の研究進捗に応じ、研究費の支出に余剰が生じた。次年度、進捗に応じ、計画的な予算執行を進める。
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