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2023 年度 実施状況報告書

運動および栄養による中間代謝物の変動が骨格筋量の維持・増進に果たす役割

研究課題

研究課題/領域番号 22K11554
研究機関滋賀県立大学

研究代表者

中井 直也  滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (90324508)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードタンパク質合成 / ケトン体 / 短鎖脂肪酸 / 骨格筋細胞
研究実績の概要

骨格筋の維持・増進の方策提案およびそのメカニズムの解明は、健康寿命延伸のために必須の課題である。運動時はエネルギー需要が高まり、タンパク質分解が亢進するがその後の栄養摂取によりタンパク質合成が分解を上回る。本研究では、運動や栄養摂取による中間代謝物の変動が骨格筋のタンパク質合成と分解に及ぼす影響を検討することを目的とした。2023年度は、運動により血中濃度が上昇するケトン体および短鎖脂肪酸がタンパク質合成と分解に及ぼす影響について解析した。マウス筋芽由来の培養細胞であるC2C12筋管細胞をグルコース不含培地で24時間培養するとタンパク質合成促進シグナルの指標であるp70 S6 kinase (p70S6K)のリン酸化が低下するが、ケトン体および短鎖脂肪酸を添加することによりp70S6Kのリン酸化の低下を一部抑制した。ケトン体ではβ-ヒドロキシ酪酸が、短鎖脂肪酸では酪酸がもっとも抑制効果が高かった。タンパク質分解システムの一つであるオートファジーの指標であるLC3II/I比に対しては酪酸のみで上昇抑制効果を認めた。ケトン体および短鎖脂肪酸は生体内の各組織でエネルギー基質として利用される他に、これらを認識する細胞膜受容体を介したシグナル分子としての役割が示唆されている。そこで、β-ヒドロキシ酪酸と酪酸を認識するGタンパク質共役型受容体41(GPR41)およびGPR43を介したメカニズムを検討したが、それぞれのGPR作動薬の添加はグルコース枯渇によるp70S6Kのリン酸化の低下を抑制しなかった。以上の結果より、β-ヒドロキシ酪酸と酪酸はGPRを介したシグナル分子としてではなく、エネルギー基質として利用されるなどによりグルコース枯渇時の骨格筋細胞のタンパク質合成の低下を抑制する可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画調書にしたがっておおむね順調に研究が進んでいる。運動により血中濃度が上昇する中間代謝物であるケトン体および短鎖脂肪酸がタンパク質合成促進シグナルを回復させるメカニズムの一部を明らかにすることができた。

今後の研究の推進方策

研究計画調書の年次計画にしたがって、研究を進めていくが、培養細胞を対象とした解析に加え、マウスを対象に中間代謝物を変動させる条件がタンパク質合成と分解に及ぼす影響についての検討を実施する予定である。
中間代謝物を変動させる条件として、(1)α-ケトグルタル酸添加水の長期的摂取、(2)間欠的絶食、(3)自発走行運動、(4)加齢、が報告されている。そこで、これらの条件を複数組み合わせることによる中間代謝物の変動が骨格筋のタンパク質合成と分解に及ぼす影響について検討する。

次年度使用額が生じた理由

旅費の支出が少額であったため次年度使用額が発生した。増加した次年度使用額は、さらなる詳細なメカニズム解析のための試薬購入に充て、研究の推進を図る。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2023 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Intermittent fasting reduces mouse body fat while maintaining muscle mass by regulating protein synthesis and autophagy2023

    • 著者名/発表者名
      Yoshii Rikako、Higashida Kazuhiko、Nakai Naoya
    • 雑誌名

      Nutrition

      巻: 115 ページ: 112130~112130

    • DOI

      10.1016/j.nut.2023.112130

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Inhibition of the mitochondrial respiratory chain reduces catecholamine?stimulated lipolysis via increasing lactate production in 3T3?L1 adipocytes2023

    • 著者名/発表者名
      Takeuchi Nodoka、Higashida Kazuhiko、Nakai Naoya
    • 雑誌名

      Molecular Medicine Reports

      巻: 28 ページ: 229 -

    • DOI

      10.3892/mmr.2023.13116

    • 査読あり
  • [学会発表] 分岐鎖アミノ酸(BCAA)はmTORC1シグナルを介して脂肪分解を低下させる2023

    • 著者名/発表者名
      高野あぐり,東田一彦,中井直也
    • 学会等名
      第96回 日本生化学会大会
  • [学会発表] 断続的絶食は絶食時のタンパク質分解を抑制することにより骨格筋量を維持する2023

    • 著者名/発表者名
      中井直也、吉井梨花子、東田一彦
    • 学会等名
      第77回 日本栄養・食糧学会大会
  • [備考] 滋賀県立大学 運動栄養学研究室 ホームページ

    • URL

      https://naoyanakai.wixsite.com/ex-nutrition

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公開日: 2024-12-25  

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