研究課題/領域番号 |
22K11558
|
研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
遠藤 伸太郎 千葉工業大学, 先進工学部, 助教 (20750409)
|
研究分担者 |
大石 和男 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (60168854)
矢野 康介 独立行政法人国立青少年教育振興機構青少年教育研究センター, 青少年教育研究センター, 研究員(移行) (30967568)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 謙虚さ / ジュニア選手 / 尺度作成 / 文化差 |
研究実績の概要 |
海外では謙虚さを測定する尺度は数多く作成されているが、日本人向け、かつジュニア選手向けの尺度は存在しない。2022年度は、ジュニア選手の謙虚さを測定する尺度を作成するため、信頼性と妥当性のある自己報告式の尺度であるRelational Humility Scale(Davis et al., 2011)を用いて、ジュニア選手を含めた中高生400名を対象としたWeb調査を実施した。調査内容は、翻訳した尺度、精神的健康状態の指標である日本語版WHO-5精神的健康状態表、心理的苦痛の指標であるK-10であった。確認的因子分析の結果、RHSは原版と同じ因子構造であると考えられた。しかしながら、因子間の関係が原版と異なり、尺度としての信頼性を保つことができていないことが示唆された。また、他の変数との関連を検討した結果、同様に原版とは異なる可能性があることが示された。以上の結果から、謙虚さとHumilityには重なる部分があるものの、異なる側面があることが示唆された。その理由として、日本の場合、謙虚さに関連する控えめな態度が求められるのに対して、海外では求められないこと、社会的望ましさの影響が考えられた。そのため、より日本人の慣習にあわせた謙虚さを測定するツールを検討する必要があるといえる。加えて、謙虚さを高める活動として、自然体験活動に注目が集まっている。ジュニア選手を含めた小中学生180名を対象に自然体験活動に関連する謙虚さと精神的健康度との関連を検討した。分析の結果、両変数には関連がみられなかった。その理由として、前述のように文化差があるため、先行研究と異なる結果が得られたと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまで、謙虚さを測定する尺度は作成されているものの、ジュニア選手を対象とした信頼性と妥当性のある尺度は作成されていない。そこで、既存の尺度を用いて中高生のジュニア選手を対象に謙虚さを測定する尺度を作成することとした。分析の結果、因子間の関係が異なり、尺度としての信頼性を保つことができていないことが示唆された。また、他の変数との関連を検討した結果、原版とは異なる可能性があることも示された。加えて、謙虚さを高める活動として自然体験活動が考えられるが、日本では十分に検討されていない。そこでジュニア選手を含めた小中学生を対象に関連を検討した結果、両変数には関連がみられなかった。以上の結果から、謙虚さとHumilityには重なる部分があるものの、異なる側面があることが示唆され、次年度は当初の予定と異なり、謙虚さを測定する新たな尺度を作成する必要性が生じた。したがって、2022年度は「やや遅れている」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
Humilityでは日本人の謙虚さを測定することが難しいことが示唆されたため、ジュニア選手の謙虚さを測定する尺度を開発する必要がある。そこで、インタビュー調査(半構造化面接)を行う予定である。協力者は、国際大会で活躍した成人選手と指導者・スタッフを考えている。協力者に対して、謙虚さの捉え方について回顧したうえで回答を依頼する。得られた回答を質的に分析し、ジュニア選手の謙虚さを構成する要素を抽出しつつ、謙虚さの向上に関連する要因を明らかにする。次に、インタビュー調査をもとに作成した尺度の信頼性と因子的妥当性を検証する。データの収集は、一流選手を含め様々な競技レベルのジュニア選手を対象に非侵襲的な測定が可能なインターネット調査により実施する。選手500名程度のデータを用いて、Cronbachのα係数、項目全体相関、および探索的・確証的因子分析により検証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新たな尺度を作成する必要性が生じたため、2022年度に予定していた研究成果の公表が遅延している。次年度使用額の用途としては、追加の調査に関わる費用、国際学会への参加費や旅費、国際学術誌への論文投稿に要する英文校正費やオープンアクセスジャーナル掲載費、それらに係わる雑費などを予定している。
|