研究課題/領域番号 |
22K11575
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
福田 崇 筑波大学, 体育系, 准教授 (30375472)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 頚部筋機能 / アメリカンフットボール / タックル / 頭部作用 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、頚部筋機能がアメリカンフットボール(AF)における衝突時の頭部作用に与える影響を明らかにすることである。日本では従来のタックル指導として、頭部を相手の腹側(ヘッドファースト)におく指導を推奨していたが、2015年より日本アメリカンフットボール協会が頭部を相手の背中側におくショルダータックリングの普及を開始した。この理由として、タックル時に頭部が直接、相手に衝突することで懸念される脳振盪のリスクを避けるためである。しかしながら、従来のタックリングとショルダータックリングのメカニズムの違いが明らかとなっておらず、安全性においてエビデンスが示されていない。 そこで、令和4年度には「従来のタックルとショルダータックルのバイオメカニクス」について検討することを課題とした。本課題におけるタックル動作の再現性を担保するには、独自でタックル装置の製作が必要である。しかしながら、タックルバックの重量は約55㎏あり、そのバックを装置に吊り下げてタックルする際の再現性に課題が残っている。現在、バイオメカニクス専門家の助言をもとに、その課題を改善する見通しが立ち、予備実験を行う準備を進めている。また、タックル動作測定時に筋電図による頚部の筋活動を同時に測定するために、その予備実験を行っている。特に、対象は測定時にAFのヘルメットと装具を装着するために対象筋への表面電極の貼付位置とサイズに工夫を要するが、これら課題は一定の見通しが立っている。またハンドヘルドダイナモメーターを用いて頚部4方向の筋力測定を行った。 本研究結果が明らかになることで,従来のタックルと新しいタックルによる頭部変位量や頚部筋機能の違いを明らかにすることができ、エビデンスに基づいた安全なタックル指導の普及が推進できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和4年度の研究課題として「従来のタックルとショルダータックルのバイオメカニクス」について検討することとした。この課題達成のために以下について、現在確認がとれているが、1年目の課題として、現在の進行は遅れている。その理由として、本課題におけるタックル動作の再現性を担保するには、振り子型のタックル装置を独自で作成することが不可欠である。しかしながら、吊り下げたタックルバックを対象者が実際にタックルするスペースを考慮すると装置のサイズを大きくせざるを得ない。しかも、タックルバックは成人に近い重量(55㎏)があり、それを安定して装置に吊り下げるための固定法にも課題がある。そのために令和4年度に実施する予定であったタックル動作の解析が実施できていない。現在、バイオメカニクスの専門家にこの固定法についてアドバイスをもらい、タックルバックを固定する方法が見つかったために5月中に予備実験を行う準備を進めている。 タックル動作の解析の進行が当初の計画通りに進まない現状を踏まえ、令和5年度の研究課題「頚部筋機能が頭部キネマティクスに与える影響」で測定するタックル動作時の筋電図による頚部筋活動を確認する予備調査を行った。特に、対象は測定時にアメリカンフットボールのヘルメットと装具を装着するために対象筋への表面電極の貼付位置とサイズに工夫を要する。新たに導入したワイヤレス筋電センサ(株式会社スポーツセンシング)の信頼性について検証を行い、必要な測定が行えることを確認している。また、動作測定時に頭部加速度の測定ができることも確認ができている。さらに、対象者の頚部筋力の測定をハンドヘルドダイナモメーターMicro FET (株式会社日本メディックス)を用いて予備調査を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度の研究課題「従来のタックルとショルダータックルのバイオメカニクス」の予備実験を6月中に行う予定である。その結果次第で、本実験を7月に予定している。タックル装置の製作が完成すれば、タックル動作の解析自体は問題なくできると予測している。懸念事項としては、実際のタックル時に加速度センサと筋電センサなどの装置がアメリカンフットボールのヘルメットや装具との間で干渉が生じないかという点である。万が一に、この問題が生じた際にはヘルメットと装具を外して測定を行うことも検討している。 次に、令和5年度の課題である「頚部筋機能が頭部キネマティクスに与える影響」を明らかにするために、頚部筋機能 (最大筋力・筋収縮速度) が頭部加速度に与える影響を分析する。頚部筋力の測定には、Micro FETを用いて、屈曲・左右側屈・伸展の4方向で実施する。筋収縮速度の測定には、ワイヤレス筋電センサを用いて、衝突後の頚部筋の立ち上がり率を測定する。筋電センサには加速度センサが装備されており頭部加速度を同時に測定できる。頚部筋機能と頭部加速度の関係から、強い頚部筋力と、より速い筋収縮は頭部加速度を減少させ得るのか確認する。本課題の予備調査をすでに行っており、本実験を8月に予定している。 令和5年度には、以下の2つ課題を実施する。 1. 従来のタックルとショルダータックルの動作解析 2. ショルダータックル時の頚部筋機能(最大筋力・筋収縮速度)と頭部加速度の測定
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は主に以下の二つである。 第一の理由として、令和4年度に、これまで頭部衝突における研究の助言を頂いているProf. Stefan Duma, Virginia Tech(USA)、およびラグビーのタックリング試技でタックリングマシンの製作を行って同種の研究を行っているProf. Melanie Bussey, University of Otago(New Zealand)を訪問し,測定に関する情報収集を行う予定であったが、コロナ禍の影響で出張できなかったこと。 第二の理由として、タックル動作解析の本実験が行えなかったことで、その後の処理で使用するパーソナルコンピュータを調達しなかったこと。 令和5年度にProf. StefanかMelanieを訪問して情報収集を予定している。また、タックル動作解析の本実験を行い、パーソナルコンピュータを購入する予定である。
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