研究実績の概要 |
肥満児に生じる大脳皮質運動野の発達遅延の調査に先立ち、今年度は基礎データの構築を行なった。幼若期の合計64匹のWistar系雄ラットを用いて、4から8週齢ごとの大脳皮質運動野の前肢面積の変化を皮質内マイクロ刺激(ICMS)を使用し調査した。また、ICMSによって手首背屈筋から誘発される運動誘発電位(MEP)および橈骨神経刺激による最大誘発電位(M-max)を記録した。 さらに、神経系の発達に伴う行動の変化を調べるため、リーチ動作課題の予備実験を実施した。生後1週間ごとに握力とペレットへのリーチ課題時の前肢の動きを3台のハイスピードカメラを用いて記録した。記録した動画は、Frame-DIASにて解析した。また、リーチ動作の量的評価には、11の構成要素と35のサブカテゴリからなるReaching movement rating scoreを用いて評価した。 結果、大脳皮質運動野の前肢面積は4週齢で2.0 ± 0.5 mm2、5週齢で4.0 ± 0.89 mm2に拡大した。MEPsの振幅、手首背屈筋の短径も4から5週齢にかけて増加が観察された。ICMSの電気的閾値(4W:43.16±2.01μA, 5W:34.90±1.92μA)は、4Wから5Wにかけて低下を認めた。リーチ動作得点(4W:19.0点, 5W:24.75点, 6W:28.0点, 7W:30.0点, 8W:33.0点)と握力(4W:409.0g, 5W:542.7g, 6W:687.0g, 7W:851.2g, 8W:973.3g)は、週を追うごとに上昇し、前腕の回内及び把持の手指の協調性及び巧緻性に関する項目に得点の上昇が確認された。 次年度は、神経系の発達と行動変化の関係性解明に向けた追加実験を実施するとともに、肥満モデルラットにおける大脳皮質運動野の発達に関する実験に着手する。
|