研究課題/領域番号 |
22K11600
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
安田 俊広 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (50323184)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / 骨格筋 / 褐色脂肪細胞 / 筋収縮 / 体液性因子 |
研究実績の概要 |
骨格筋のミトコンドリアの能力は持久性能力だけでなく,脂質代謝やインスリン感受性にも関与しているがその増減メカニズムには未だ不明な点が多い.本研究は骨格筋の収縮活動という局所因子と交感神経活動の亢進といった体液性因子に着目し,薬物投与や運動もしくは不活動といった介入を行いミトコンドリア増減に関与する因子の変化を詳細に検討し,骨格筋のミトコンドリア増減に関与する要因を明らかにすることを目的とする.測定対象はミトコンドリアバイオジェネシスに関与するキータンパクとしてPGC-1αをミトコンドリア関連タンパクとしてCOXI, COX II, ND1等の測定を行う.研究期間を通して以下の3つの実験を計画した. <実験1> ラットにノルエピネフリンを注射し30分後,3時間後,6時間後,18時間後に褐色脂肪細胞と骨格筋を摘出しその変化について検討する <実験2>ラットに水泳トレーニングを負荷し,ミトコンドリアの増加がβ阻害剤のプロプラノロールで阻害されるかどうか検討する <実験3>ラットの片脚をギプス固定し,3週間後に両脚のヒラメ筋と前頸骨を摘出し測定に供する. 令和5年度は4年度にエピネフリン投与18時間後のサンプル分析を行ったが,それ以上の詳細な時間経過を辿ることができなかったので,その続きとして3時間後,6時間後及び24時間後のサンプル採取と分析を行った.その結果,3,6時間後では褐色脂肪細胞,骨格筋ともにミトコンドリア関連タンパクの増加の兆候は見られず,18時間以降に褐色脂肪細胞においてPGC-1αの増加が認められた.この増加は骨格筋においては観察されず,筋収縮がPGC-1αの増加に関与している可能性を示唆する結果となった
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画から予算が減額されたため,測定項目を精選する必要が生じた.特にmRNAの測定のためにサーマルサイクラーを購入し,実験条件を整えているが,現状はタンパク測定を重点的に行っている状況であり,mRNAの測定には至っていない.今年度mRNAの測定に着手したいと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
実験1の実験結果が出て,学会に発表・論文執筆の準備を行う.さらに詳細なメカニズムを理解するためにmRNAのデータが必要なため測定を確立したい.また,予定していた下記2つの実験に着手する <実験2>ミトコンドリアの増加モデルとしての水泳運動.先行研究にしたがい深さ50cmの水槽に,ラット1匹あたりの平均表面積が170cm2になるよう同時に泳がせる.水温は35°Cとする.3時間の水泳を15分の休憩をはさんで2回,計6時間の水泳運動を5日間実施する.水泳運動に先立ち,実験群のラット (8匹)には0.4 mg/kg量のプロプラノロール(β2遮断薬)を1日に1回皮下注射する.対象群のラット(8匹)は生理食塩水を注射する.5日目の水泳トレーニング終了24,48時間後に前肢骨格筋のEpitrochlearis (EPI) を摘出し,実験1と同様,ウェスタンブロッティングで目的タンパク質の定量を行う.測定するタンパク質はPGC-1αおよびミトコンドリア関連タンパク(Citrate Synthaseなど)とする. <実験3> ラット10匹を用いる.体液性因子を同一にしながら異なる局所筋活動影響を観察することを目的とした不活動のモデルとしてラットの片脚足関節のギプス固定を行う.ギプス固定3週間後に両脚のヒラメ筋と前頸骨筋を摘出し,非固定脚とギブス固定脚を比較する.
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次年度使用額が生じた理由 |
申請者の実験室ではm-RNAの測定が初めてだったため,その実験環境の整備に時間を要した.また,ウエスタンブロッティングの測定においてもデータの再現性に疑いがあり,その原因究明に時間を要した.令和6年度は未達の実験計画を実施する予定である
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