研究課題/領域番号 |
22K11614
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
高寄 正樹 日本大学, 生産工学部, 准教授 (40635520)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 反応抑制 / 運動負荷 / 事象関連電位 |
研究実績の概要 |
本研究では,心拍予備能を指標に負荷設定した自転車エルゴメーターにおいて,低・中・高の異なる回転数のペダリング運動を設定し,筋活動ならびに換気能の循環応答への関与率を変化させる。そして,運動負荷前・中の認知機能(空間的注意ならびに反応抑制)を評価する反応課題中の脳波出現様式から,急性運動時の筋活動様式ならびに運動時換気(循環応答)が,認知機能のうちの反応抑制機能に対してどのような影響を与えるかを解明する。 本年度においては,自転車エルゴメーターによるペダリング運動の運動負荷強度は,50%HRR(予備心拍数)の中等度とし,反応抑制課題としてストップシグナル課題(SST)を用い,運動負荷前,運動負荷中,2局面の反応抑制機能について比較検討を行なった。実験においては各局面での脳波(事象関連電位),心拍数,呼気ガス成分,運動肢の筋電図,SSTのパフォーマンスについて記録をした。その結果,運動負荷中におけるGo反応時間は,反応肢の同側ならびに対側の下肢の筋出力がみられない休止期において最も短縮傾向を示した。また,反応抑制の成功率についても下肢の筋出力がみられない休止期がもっとも高かった。さらに運動負荷中における事象関連電位のP300成分の潜時についても,同様に下肢の筋出力の休止期がもっとも短かった。以上のことから,下肢の筋出力に対して注意資源の配分がなされることにより,反応抑制に関する情報処理活動に対して向けられる注意資源が減少することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は実験システムの構築において、当初研究計画よりもやや時間を要した。本年度は反応抑制機能,事象関連電位と筋発揮との関係を中心に解析検討を行ったが,呼気ガス成分との関連についての検討が不十分であった。したがって,当初研究計画よりもやや遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,運動肢の筋発揮局面から反応抑制機能への影響について検討を行ったが,循環応答との関連については,検討が不十分であった。急性運動負荷と認知機能との関連性について検討した先行研究は,実験条件が多様であるためコンセンサスの得られた結果は示されておらず,運動に関連するどの要因が,あるいはその複合的作用がどのように影響をもたらすかを詳細に検討する必要がある。次年度は,循環応答との関連性について検討を進めるのに加えて,自転車エルゴメーターによる運動負荷時の回転数を低・中・高に分けて設定し,運動肢の筋発揮のタイミングのみならず筋の発揮量の違いによる差についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験システムの構築の遅れならびにCOVID-19の影響により実験参加者の協力を得ることが難しく,予定通りに実験参加者への謝金として使用することができなかった。 次年度は,国際学会での研究発表のための海外出張を予定しており,当初予算計画時よりも旅費にかかる費用が高騰しているため,本年度未使用分も旅費に充当して使用する予定である。
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