研究実績の概要 |
令和5年度は,相対的な運動強度に対する動機づけの共調整がポジティブ感情に及ぼす影響を検証することであった.年度の前半に予備実験を実施した.被験者は,iPadに表示された心拍水準(%HRmax)(最大心拍数=220-年齢)をリアルタイムでモニタリングし,60%前後で運動するようペースを調整することの教示を受けた.しかしながら,運動時間が5分という短い時間であったため,この時間内に心拍数を上げることが困難な被験者が数名おり,実験プロトコルの変更の必要性が生じた.このことから,年度の後半からは,令和6年度に計画したプロトコルである,主観的な運動強度に対する動機づけの共調整がポジティブ感情に及ぼす影響を検証することとした.主観的な運動強度とは,主観的に快適と感じるペースを保ちながら運動する,快適自己ペース運動(橋本・斉藤,2015)のことである.これは,無理のない楽なペースで運動を開始し,自分自身の感覚で快を経験する運動強度の調整によりポジティブ感情を得る方法である.実験群はモニター画面に再生されるパートナーと共に運動する.統制群にパートナーはない. 実験結果は次の通りとなった.快感情については,両群ともに運動前から運動後にかけて向上した.リラックス感については,交互作用がみられ,両群ともに運動前後から運動後にかけて低下したが,実験群は統制群ほどの低下はみられなかった.これらのことは,モニター画面に再生されるパートナーと共に運動することは,ポジティブ感情の向上や維持に効果があることを意味している.
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