研究課題
本研究では小児の身体機能低下に対する予防的介入方法の確立を目的としており、これまでに集積されたデーターから、9-12歳の高学年児童における運動習慣と身体機能との関連性について検討した。児童運動器健診に参加したクラブ活動に参加する時期の9~12歳の小学校児童239名を対象とし運動習慣の有無によって、2群の群間比較、ロジスティック回帰分析を実施した。運動習慣の定義は、厚生労働省が定めている「1回30分以上の運動を1週間に2回以上実施しており、それが1年間以上継続している」とし、学校の体育の授業は含めないことを条件とした。評価指標は、四肢骨格筋量Skeletal Muscle mass Index (SMI)、握力、立ち幅跳び、片脚立位時間、歩行の質を評価するGait Deviation Index (GDI)を用いた。239人の児童のうち、178人 (75.5%)が運動習慣を持っており、運動習慣がない児童は、ある児童と比べて、下肢骨格筋量が有意に低く (p<0.01)、立ち幅跳びの距離が有意に短い結果となった(p<0.01)。また、9~15歳の40名の子どもを対象に、新型コロナウイルス流行前と流行期間の2回に分けて、運動器健診に参加してもらい、動作時バランス能力、片脚立位時間、下肢筋力テスト、歩行速度、体脂肪率、身体活動時間、動画視聴時間、睡眠時間、1週間の食事回数、健康と生活の質に関するアンケートを調査した所、子どもの動作時バランス能力が有意に低下していた(p<0.01)。今年度の横断解析において運動不足により下肢の骨格筋量や動作時のバランスの力が低下しやすいことが確認できた。
2: おおむね順調に進展している
脊椎アライメントと身体機能との関連について、2022年度内までに、脊椎アライメントのデーター集積を45例行った。今後、脊椎アライメントとの関連性を確認するまでにさらに約 55例のデーターの集積が必要である。これまで、1か月に例の割合で児童健診を行っており、2023年度内までに約100例の脊椎アライメントのデーターの集積が終了する予定である。また、プログラムの作成については、今年度の研究成果から、動的バランス能力の向上が、身体機能の増進に有効であることが確認されたため、動的バランスの増進を中心とした運動プログラムを作成中である。
今後の研究の推進の方策としては、脊椎アライメントの評価である胸椎後弯角や腰椎前弯角と身体機能との関連性について横断解析を行い、脊椎アライメントに関わる因子を抽出していく。抽出された因子をもとに、運動プラグラムにその内容を盛り込んだプログラムやマニュアルを完成させる。2023年度内には完成された運動プログラムに基づいて、運動教室というアプローチで、運動プログラムによる身体機能の改善効果を前向きに調査していく予定である。
当初予定していた学会発表に伴う旅費や学会費が予想よりも低く計上されたため、残額を生じた。R5年度においては十分な調査結果をもとに学会発表や研究成果の投稿を積極的に行うために残額を使用する計画である。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件)
Brain and Development
巻: 45(3) ページ: 171-178
10.1016/j.braindev.2022.11.001
Scientifc Reports
巻: 12 ページ: 7822
10.1038/s41598-022-11906-1
Int. J. Environ. Res. Public Health
巻: 19 ページ: 11513
10.3390/ijerph191811513