研究実績の概要 |
座りっぱなしが健康リスクや死亡リスクを高めることが多くの疫学研究で明らかになっている。身体活動奨励に関するガイドラインをみると、座っている時間や座りっぱなしを減らすこと、座りっぱなしの時間を中断することが奨励されている。一方で、中断時の効果的な身体活動に関する科学的根拠は少ない。そこで、座位と健康リスクとの関係について文献レビューを実施し、特に座位と循環動態との関係について調査した研究を整理した。 長時間の座位は、下腿の微小血管および大血管拡張機能(反応性充血、FMD)を低下させるが、これらの低下は短時間の歩行によって回復することが示された(Restaino, 2015)。長時間の座位による下肢内皮機能低下(膝窩動脈FMD)は、座位時のわずかな脚の動きで抑制可能であり、血管のシェアストレスを断続的に増加させることの重要性が示された(Morishima, 2016)。長時間の座位を中断し、軽強度の歩行またはSRA(単純抵抗運動:30分ごとに3分間の簡単な抵抗活動(20秒間の自重ハーフスクワット、20秒間のカーフレイズ、20秒間の大臀筋収縮と膝上げ)を短時間行うと、成人糖尿病患者の安静時血圧と血漿ノルアドレナリン濃度が低下した(Dempsey, 2016)。長時間の座位は、座位を定期的に中断した場合と比較して、大腿動脈の血管拡張機能を低下させ、肥満成人において血中ET-1濃度を増加させた(Climie, 2018)。健康なデスクワーカーにおいて、長時間の座位は、脳血流を減少させるが、この減少は短時間の歩行休憩を頻繁に取り入れることで相殺された(Carter, 2018)。脳血管機能(血流速度)は座位により低下するが、座位の中断をはさむことで上昇することが示された(Wheeler, 2019)。
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