研究課題/領域番号 |
22K11696
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
松井 弘樹 群馬大学, 大学院保健学研究科, 准教授 (20431710)
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研究分担者 |
須永 浩章 群馬大学, 大学院医学系研究科, 研究員 (10760077)
横山 知行 群馬大学, 大学院保健学研究科, 教授 (70312890)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 脂肪酸組成 / ミトコンドリア / マイトファジー / 疾患モデル |
研究実績の概要 |
我々はこれまで、脂肪酸伸長酵素Elovl6による脂肪酸組成の変化が、ミトコンドリアの選択的分解(マイトファジー)に重要なParkinの発現誘導を介して、マイトファジーとミトコンドリアの品質維持に影響し、心不全の病態を制御することが明らかにしてきた。そこで、リピドミクス解析を行ったところ、Elovl6による直接的な反応に関わるパルミチン酸、ステアリン酸のみならず、細胞膜リン脂質のホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンの組成が変化すること、さらにこの膜リン脂質組成における特定の脂肪酸Xが、Parkinのタンパク発現誘導を著明に誘導することが分かり、この脂肪酸Xが心不全の病態抑制に深く関与する可能性を明らかにした。 ミトコンドリアは生体エネルギーを作り出し、そのエネルギー基質である脂肪酸との関連は密接である。また、Elovl6は脂質代謝の盛んな様々な臓器に発現が見られることから、全身Elovl6欠損マウスの各臓器(肝臓、骨格筋、腎臓、脳、脂肪組織etc.)において、Parkinの発現やマイトファジーの解析を行った結果、腎臓においてもParkinの発現誘導が認められることを明らかにした。そこで、Elovl6欠損マウスに急性腎障害モデルの処置を施したところ、腎臓の中で代謝がもっとも盛んな近位尿細管の病態に大きく影響を与えることが明らかとなった。 現在、他の臓器でも、Elovl6の欠損に伴うParkinの発現誘導の傾向を明らかにしており、各臓器に特異的なElovl6欠損マウスの作成と脂質組成の解析、疾患モデルの作成による病態との関連性について検討を進めている。さらに、Parkinの発現を制御する脂肪酸Xの投与により、各臓器における病態改善効果が見られるかについても検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Elovl6の欠損におけるParkinの発現誘導およびそれを誘導する脂質分析、疾患モデルによる病態との関連性など、着実に研究計画は進んでおり、順調に成果も得られている。
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今後の研究の推進方策 |
Elovl6の欠損により腎臓におけるParkinの発現誘導が見られ、急性腎障害の病態への影響が認められたことから、現在、近位尿細管上皮細胞特異的Elovl6欠損マウスを作成を進め、脂肪酸組成とParkin、マイトファジーと病態との解析を進めている。さらに、近位尿細管上皮細胞の脂質組成を外因性、内因性の両面から変化させることで、急性腎障害の病態に影響が出てくるかも併せて、検討を行っていく予定である。 その他の臓器・細胞においても、Parkinのタンパク発現と脂質組成の解析、疾患モデルの作成による病態との関連性について検討を進めている。また、各臓器において脂質組成に特徴があり、Elovl6の発現変化によって影響を受ける脂肪酸組成に違いが生じていることから、Parkinの発現、マイトファジーを制御する責任脂質を臓器ごとに検証を行っていく。それに伴い、病態の予防・治療に効果的な脂質組成の制御や投与方法なども検討を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和5年度にElovl6と脂肪酸組成、マイトファジーに関わるメカニズムの詳細解析を行ったが、各臓器における病態モデルの作成、脂質組成解析などに時間がかかり、解析が実施出来ない部分があった。また、細胞特異的Elovl6欠損マウスの作成も進めているが、繁殖に時間がかかり、解析が出来ない部分もあった。 (使用計画) 令和6年度に繰り越した研究費に関しては、令和5年度で解析しきれなかった各臓器における病態モデルの作成、脂質組成解析、細胞特異的欠損マウスにおける病態モデルの解析費用に充てる予定である。主な内訳としては、マウス飼育費、病態モデル動物の作成費、組織・血液サンプルにおける各種マーカーの解析費用、脂肪酸組成の測定費用などである。
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