研究課題/領域番号 |
22K11699
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
後藤 美和 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任助教 (70327576)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | GDF15‐GFRALシグナル / 慢性腎臓病(CKD) / 消化器症状 / 痩せ |
研究実績の概要 |
Growth-differentiation factor 15(GDF15)は、脳の摂食中枢に作用し食欲不振を引き起こす。近年、がんなどの多数の慢性疾患で見られる体重減少にGDF15の上昇が関連することが報告され、新たな治療ターゲットとして注目されている。慢性腎臓病(CKD)患者では、腎機能低下に伴い嘔吐や食思不振などの消化器症状が強くなり、低栄養によるサルコペニアや、加えて小児では成長障害を引き起こすが、消化器症状が出現する病態に関する検討は十分になされておらず、現時点で有効な治療法もない。本研究は、臨床的検討と動物実験によりGDF15-GFRAL軸とCKD患者の消化器症状の因果関係を解明することを目的にしている。令和4年度は、2歳以上20歳未満の23名のCKD患者と18名の対象患者において、腎機能、血清GDF15値、各種の体格の指標を測定し解析を行った。その結果、CKD群では、血清GDF15値と肥満度に有意な負の相関を認め(R=0.48)、肥満度-15%以下の群では、肥満度-15.1%以上の群より有意に血清GDF15値が高値であることが示された。肥満度とeGFRに有意な相関はなく、CKD群では肥満度が低い患者ほど、腎機能とは独立して血清GDF15値が高いことが示された。 対照群ではこれまでの報告同様、肥満度が高い対象ほど血清GDF15が高い傾向がみられ、CKD患者とは異なる傾向であった。以上の結果から、小児CKD患者の痩せにはGDF15を介した食行動の変化が関与している可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度に検査を行ったCKD患者は40名であり、CKD群の対象の組み入れは現時点では順調であるが、末期腎不全の患者の組み入れが遅れており、今後の課題である。また、令和4年度に開始を予定していた動物実験に遅延が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、初年度に組み入れた対象の継続した検討を行うとともに、末期腎不全患者の組み入れに尽力する。また、初年度に開始できなかった動物実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染よる研究施設への立ち入り制限等により、動物実験が予定通り進行しなかったことから、動物実験のために計上していた予算が次年度使用予算として生じている。
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