研究課題
代表的な自己免疫疾患である全身性エリテマトーデス(SLE: Systemic Lupus Erythematosus、 指定難病49)は、国内推定患者数が6〜10万人にも上るが、その分子機構は未だ十分に理解 されておらず、根治療法も確立されていない。従来の主流な治療法である非特異的な免疫抑 制療法は、結果としてウイルスや細菌に対する免疫応答低下を招き、感染症罹患による致命 的な問題となる事例が多く、極めてアンメットメディカルニーズの高い疾患である。研究代表者はこれまでに、免疫細胞の脂質蓄積が炎症生変化と自己免疫疾患の発症を促進すること、一方で細胞内コレステロールの減少や、オメガ3系多価不飽和脂肪酸の増加が、炎症や、B細胞から抗体産生細胞への分化を抑制し、病態を改善することを明らかにしてきた。また、オメガ3系多価不飽和脂肪酸を経口投与したマウスにおいては、外来抗原に対する抗原提示細胞には影響しないことを見出した。今年度はSLEの早期診断を可能とする血中脂質マーカーの同定を試みた。免疫細胞におけるリピドーム解析とトランスクリプトーム解析、および、血中のリピドーム解析を行い、病態において変化する血中脂質を探索、候補となるいくつかの脂質分子を挙げた。そこで、候補となる脂質分子の経口投与を行い、病態への影響を検討し始めている。
2: おおむね順調に進展している
当該期間内に、脂質代謝遺伝子欠損マウスを用いて自己抗体産生および、外来抗原応答性抗体産生への影響を検討し、自己抗体産生が抑制される一方、外来抗原に対する抗原提示細胞は影響を受けないことを見出した。また、自己免疫疾患モデルマウスの血液及び免疫細胞を用いたリピドーム解析から、病態関連脂質の候補となる脂質を探索し、その制御機構と自己免疫疾患病態への影響を検討中であり、研究は概ね順調に進展していると言える。
これまでに血中の脂質解析を行なったものの、病態の評価をできるようなマーカーの同定に至っていない。現在、異なる条件でのリピドームデータを解析中であり、候補となる数種類の脂質を同定しつつある。今年度は、引き続きリピドーム解析を進める。また、候補脂質を経口投与するなど介入を行い、自己免疫疾患病態への影響を検討する。
試薬や研究試料の一部は既に手元にあるものを使用できる状況にあり、当初の予定よりも研究費を使用する機会が少なかったため。
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J Exp Med
巻: 220 ページ: e20220681
10.1084/jem.20220681