研究課題/領域番号 |
22K11711
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
加藤 洋一 順天堂大学, 医学部, 教授 (00231259)
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研究分担者 |
橋本 良太 順天堂大学, 医学部, 准教授 (60433786)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | マクロファージ / 誘導型一酸化窒素合成酵素 / NO / サイトカイン / MAPK / JAK-STAT経路 / IL-12 |
研究実績の概要 |
生活習慣病による動脈硬化の発症・進展には,血管壁局所での慢性炎症が重要であることが明らかにされている。なかでも自然免疫を担うマクロファージと,獲得免疫の柱となるT細胞が中心的な役割を果たす。マクロファージにおける誘導型一酸化窒素合成酵素 (inducible nitric oxide synthase, iNOS) は過剰のNOを生成することにより、生体内に侵入した外敵(細菌、ウイルスなど)を阻止する防御機能を担っている。しかし、iNOSの発現が持続すると、過剰に生成されたNOは逆に生体にとって有害な作用をもたらす。内皮型NOS (endothelial NOS, eNOS) は血管壁で抗動脈硬化的に作用するが、iNOSの血管機能への影響は多彩で、動脈硬化症への影響も定まっていない。 そこで初年度である令和4年度は、まず I. 「マクロファージからのNO過剰分泌を調整するサイトカインの同定」を行った。 LPS単独刺激時とMAPKシグナル経路阻害下でのLPS刺激時において分泌されるサイトカインの種類と量の差異に着目し、iNOS発現量およびNOガス産生量を増大させる新たなサイトカインを探索する目的で、111種類のサイトカインを網羅的に解析できるサイトカインアレイおよびELISAを行った。MAPKシグナル経路阻害下でのLPS刺激時に分泌が増大し、JAK-STATシグナル経路阻害下でのLPS刺激時に分泌が変化しないサイトカインを探索したところ、IL-12が浮上した。NK細胞の活性化やTh0をTh1に変換する際に重要であるIL-12が、オートクラインとしてマクロファージ自身のiNOS活性化に関与する可能性が示される結果を得た。 今回我々は、マクロファージが分泌したIL-12がTNF-αの存在下でオートクライン的にiNOSを活性化することを確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は、マクロファージを活性化するグラム陰性菌の外膜構成成分リポ多糖 (LPS) がSTAT-1を活性化する (Hashimoto, Katoh et al., 2020) だけでなく、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ (MAPK) をも活性化する (Hashimoto, Katoh et al.,2017) ことを報告してきた。その際にMAPKシグナル経路がJAK-STATシグナル経路に先んじて活性化されること、さらにLPS単独刺激時よりもMAPKシグナル経路の阻害下でLPS刺激する方がJAK-STATシグナル経路の活性化、iNOS発現量およびNOガス産生量が増大することを突き止めている(投稿中)。 NK細胞の活性化やTh0をTh1に変換する際に重要であるIL-12が、オートクラインとしてマクロファージ自身のiNOS活性化に関与することの確認が重要であった。M1マクロファージから分泌されるIL-12は、①NK細胞を活性化してIFN-γを分泌させると共に、②Th0からTh1への誘導を促進し、Th1から分泌されるIFN-γも併せてマクロファージを活性化することが国外の研究で報告されている。今回我々は③マクロファージが分泌したIL-12がTNF-αの存在下でオートクライン的にiNOSを活性化することを初年度に確認できたので、以下の検証に向けての研究を推進する。
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今後の研究の推進方策 |
次年度である令和5年度は、「病原体感染模擬マウスおよび動脈硬化マウス(in vivo)におけるサイトカインおよびNO産生とIL-12抗体、経口LPSの影響をモニタリング」に関する検証を行う。 <被験動物>LPS投与細菌感染モデル(濃度検討済), ApoEノックアウト(KO)マウス動脈硬化モデル <方法>LPS単独、LPS及びIL-12抗体投与12、24、48時間後に採血し、血中のサイトカイン濃度(IL-6、IL-12、TNF-α、IFN-γ)及びNO濃度を各々ELISA法、DANを利用した蛍光法で測定する。経口投与したLPSにより腹腔マクロファージはプライミング状態に誘導されることより、小麦共生パントエア菌から抽出されたLPS (IP-PA1) 経口投与群についても検討を加える。屠殺後解剖し、心臓、大動脈、肺の形態学的変化と組織染色を検討する。ApoE KOマウスでは高脂肪食負荷4ヶ月後に、上記の指標測定及び胸部大動脈プラーク形成を検討する。各群10匹ずつデータを取得する。 これらの検証により「マクロファージのiNOS活性化によるNO過剰分泌が動脈硬化による病態を悪化させる一因である可能性及びそのメカニズム」を解明し、次年度以降の、「同メカニズムを応用して、動脈硬化進展抑制および、我々が先行研究で確立した間葉系幹細胞から分化誘導した平滑筋細胞により作製した再生血管の変性防止・耐久化を目指す」ことに繋げていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究進捗に関わる試薬購入に関して少額であるが先行して使用する必要があったため
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