研究課題/領域番号 |
22K11716
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研究機関 | ノートルダム清心女子大学 |
研究代表者 |
小林 謙一 ノートルダム清心女子大学, 人間生活学部, 教授 (80434009)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 臓器線維化 / キノリン酸 / 非アルコール性脂肪肝疾患 / 非アルコール性脂肪膵疾患 / トリプトファン代謝 / 肥満 / GAN飼料 |
研究実績の概要 |
今年度は、非アルコール性脂肪肝(NASH)モデルマウスの各組織における線維化およびその関連因子に及ぼす影響の検討について中心に研究を遂行した。一般的な炎症状態を引き起こす病態モデルである高脂肪・高コレステロール・高フルクトース飼料(GAN飼料)誘導性非アルコール性脂肪肝(NASH)モデルマウスを作製(14週間飼養)し、膵臓・肺・心臓組織を用いて、線維化およびトリプトファン代謝に及ぼす影響について検討を行った。その結果、GAN飼料群では、対照群と比べて、顕著な体重増加や脂肪重量の顕著な上昇が認められ、肥満状態にあると判断した。次に肺や心臓については、線維化に顕著な影響は認められなかった。その上で,血清を用いた生化学的解析を行った結果、血中アミラーゼ値がGAN群で有意に上昇し、膵炎を起こしている可能性が示唆された。そこで、膵線維化を呈している可能性を調べる目的で、膵臓での定量的PCRを行った結果、αSMAとCol1a1の有意な増加が認められ、膵線維化が惹起されている可能性が示唆された。興味深いことに、キヌレニン代謝経路の各酵素遺伝子がGAN群の膵組織で軒並み増加していることが示された。以上の結果より、非アルコール性脂肪肝疾患と非アルコール性脂肪膵疾患(NAFPD)とは密接に関連している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非アルコール性脂肪肝(NASH)モデルマウスの心臓・肺・膵臓で臓器線維化が起こっているかどうか明らかにすることができた。これらの臓器線維化については、当初の予定に記載されており、これらについては、ある程度明らかにすることができた。したがって、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、QPRTノックアウトマウスの膵臓・肺・心臓組織を用いて、臓器の線維化およびその関連因子に及ぼす影響の検討を実施していきたい。具体的には、QPRTノックアウトマウスの膵臓・肺・心臓組織を用いて、組織化学的解析(通常の色素染色・免疫染色法、in situ hybridization 法など)を実施する。また、GAN飼料誘導性NASHモデルを用い、膵線維化とトリプトファン代謝の関係性について詳細に解析する予定である。加えて、キノリン酸蓄積がこれらの臓器における線維化のマーカー遺伝子(α-SMA、Col1a1、Tgfβ)および炎症性サイトカイン(IL-1、IL-6など)の遺伝子発現に及ぼす影響について、定量的PCRを用いて解析する。 また、肝星状細胞HHsteC、膵星細胞HpaSteCを用い、培地にキノリン酸を添加する実験を行ない、線維化誘導に及ぼす影響を生化学的解析や遺伝子発現解析を行ない明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度については、厳密かつ適切に経費を支出した結果、ほぼ満額支出したものの、一部4000円程度の次年度繰越額が生じた。2023年度に関しては、物品費が大きなウェイトを占める予定である。具体的には、動物実験関連消耗品(餌、床敷、ケージ、給水瓶など)、培養細胞実験関連消耗品(CO2ボンベ、液体窒素、培養ディッシュ、プラスチック製品、血清など)、培養細胞株、分子生物学実験関連消耗品(リアルタイムPCR関連試薬類、プラスチック製試験管ならびにピペットなど)、生化学実験消耗品(各種抗体、ウェスタンブロッティング関連消耗品など)、組織学的実験消耗品(染色バット、染色液、抗体など)を購入予定である。出張費に関しては、国内学会で発表などを行うことを想定している。その他の雑費については、一部解析の受託解析費用および論文の投稿費用などを念頭にいれている。
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