研究課題/領域番号 |
22K11721
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
渡辺 純 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (10374729)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 腸内細菌 / 代謝変換 / グルコシノレート / イソチオシアネート / 抗炎症 |
研究実績の概要 |
本研究は、①in vitro培養系を用いて腸内細菌によるグルコシノレートの代謝変換の修飾を介してその生体調節機能を向上しうる食品素材・プロバイオティクスを選抜し、②選抜した食品素材・プロバイオティクスがグルコシノレートの抗メタボリックシンドローム・抗炎症性を向上しうるか明らかにすることを目的としている。本年度は①について、以下を実施した。 ヒトと消化管構造が類似するブタの糞便を腸内細菌源とし、in vitro培養系であるKUHIMMを導入してGAM培地中で培養した。ここにグルコシノレートを高含有するブロッコリー粉末を添加し、腸内細菌によるグルコシノレートのイソチオシアネートへの変換を調べた。その結果、腸内細菌による変換は確認されたものの、培養上清でCaco-2細胞を添加したところヘムオキシゲナーゼ-1 (HO-1) の発現上昇は観察されなかった。研究室で保有する乳酸菌株からイソチオシアネート変換能を有する菌株を選抜したところ、Lactiplantibacillus plantarum T-1株を得た。T-1株、およびイソチオシアネート変換能が報告されているCompanilactobacillus futsaii NRIC0417株を上記in vitro培養系に添加して培養したところ、NRIC0417株添加により培養上清中のイソチオシアネートが顕著に増加し、Caco-2細胞におけるHO-1発現を有意に増加させた。T-1株にはこのような作用は認められなかった。以上の結果は、適切なプロバイオティクスにより腸内細菌によるイソチオシアネートへの変換を増強し、Nrf2経路活性化を介した抗メタボリックシンドローム・抗炎症作用を期待させるものであった。しかしながら、NRIC0417株は消化管内環境での生残性を示さなかったことより、今後乳酸菌株をさらに選抜する必要があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腸内細菌によるグルコシノレートのイソチオシアネートへの代謝変換を評価するためのin vitro培養系、代謝変換により生じるイソチオシアネートのNrf2経路活性化を培養細胞で評価する系を構築した。この評価系を用いて、イソチオシアネートへの代謝変換能が報告されている菌株ではあったが、培養系への添加により腸内細菌による代謝変換を増強することで、Nrf2経路を活性化する可能性を示唆した。以上より、現在まで本計画研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
NRIC0417株は腸内細菌による代謝変換を増強したが、消化管内環境での生残性を示さなかった。NRIC0417株の死菌体にもミロシナーゼ様活性が残存するか調べるとともに、乳酸菌株の選抜をさらに行う予定である。また、腸内細菌叢を変化させることが知られている難消化性オリゴ糖をはじめとするプレバイオティクスを培養系に添加し、腸内細菌の改変により変換能が向上するか検討する。さらに、有望な素材について、抗メタボリックシンドローム作用、抗炎症作用を動物モデルを用いて評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
備品費としてグローブボックスを計上していたが、申請額よりも大幅な削減があったため購入を断念し、その代替としてKUHIMMを使用することとしたため、次年度使用額が生じた。一方で、共通機器であるHPLC、リアルタイムPCR装置を使用するが、その使用料が当初予定よりも大幅に増加する予定である。また、すでに計上している培養用機材、分子生物学実験用試薬、HPLCカラムなどの消耗品、旅費として翌年度分と合わせて使用する計画である。
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