研究課題/領域番号 |
22K11728
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研究機関 | 名寄市立大学 |
研究代表者 |
田邊 宏基 名寄市立大学, 保健福祉学部, 准教授 (60573920)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | B. acidifaciens / 難消化性糖質 / ラット |
研究実績の概要 |
昨年の研究により、5%のAscophyllum nodosum由来食物繊維の摂取で充分にラット盲腸内B. acidifaciens数を増加させることが明らかになったため、本年度はこの効果が発現し始める時期を明らかにする目的で、A. nodosum飼料摂取後定期的に解剖し、盲腸内B. acidifaciens数の変化を解析した。6週齢のSD系雄性ラット42匹を6群に分け、5%A. nodosum添加飼料で飼育した。飼育開始日、飼育1、3、5、7、10および14日後に解剖し、盲腸内B. acidifaciens数を測定した。その結果、5% A.nodosum粉末は、3日間摂取させることによって、B. acidifaciensを有意に増加させ、7日から10日間の摂取によりB. acidifaciensの数を最大限増加させることが明らかになった。この時、各種有機酸濃度は全く増加しなかったが、アンモニア等も増加しておらず、多様性の低下も認められないため、腸内細菌叢のバランスが乱れた状態を示すディスバイオシスの状況にもなかった。また、昨年度調製した褐藻粉末による動物実験を実施した。5%の A.nodosum粉末、ワカメ粉末、コンブ粉末をそれぞれ添加した飼料で7日間飼育し、盲腸内容物のサンプリングまで行った。この実験を充実させるため、さらに3群加えた。それらの群とはいずれも5%アルギン酸粉末群である。アルギン酸はマンヌロン酸とグルロン酸の割合(M/G)によって多くの性質の異なる亜種が存在し、コンブとワカメも異なる。A.nodosumの持つアルギン酸に近いのはコンブであるが、これら粉末の変化におけるアルギン酸の寄与度を明らかにするため、M/Gの異なる3種のアルギン酸粉末群も加えて検討した。今後はこの盲腸内容物サンプルから盲腸内B. acidifaciens数、有機酸濃度等を解析し、食経験の少ないにA.nodosum代わり、日本において多く食される褐藻に置き換えることができるか検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
褐藻類の調整を終え、さらに精製アルギン酸群を加えた最終的な動物実験の実施まで完了している。こちらは進んでおり、粛々と分析を進めるだけである。一方で、菌類の単離は完了しておらず、やや遅れている。しかしながら、来年は動物実験に充てるべき時間を菌類の単離に充てられるため、全体としてはおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
天然の褐藻類から調整した難消化性糖質を摂取させたラットから得られたサンプルの盲腸内IgA量をELISA法で、盲腸内有機酸濃度をHPLC法で、盲腸内細菌数をメタ16SrRNA遺伝子解析法で解析する。特にB. acidifaciens数に関してはrtPCR法によっても解析する。また、菌の単離も続行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
遅れている腸内細菌単離作業に用いる試薬費用と、進んでいる動物実験関連費用の差により生じた金額である。次年度に腸内細菌単離作業を実施する際に使用するため問題ないと考えている。
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