研究課題/領域番号 |
22K11737
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研究機関 | 大阪樟蔭女子大学 |
研究代表者 |
三善 陽子 大阪樟蔭女子大学, 健康栄養学部, 教授 (40457023)
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研究分担者 |
橘 真紀子 大阪大学, 大学院医学系研究科, 特任助教(常勤) (50817252)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 小児がん / 晩期合併症 / 内分泌代謝異常 / 栄養療法 / 長期フォローアップ / 小児がん経験者 / AYA世代がん |
研究実績の概要 |
小児がん経験者(childhood cancer survivors:CCS)と若年がん経験者は、原疾患及び治療の影響により晩期合併症を発症するリスクがある。内分泌代謝異常(糖尿病・高血圧・脂質異常症など)や心血管疾患の頻度が高いと報告されており、フォローアップにおける予防的介入と患者教育が重要と考えられる。そこで申請者らは、小児・思春期若年成人(adolescent and young adult:AYA)世代がん患者の栄養療法による晩期合併症予防を目指して、以下の研究を行った。 2023年度(2年目)は初年度に引き続き、小児・AYA世代がん患者の食生活と栄養管理に関する研究の基盤作りと実態調査に取り組んだ。①患者側の実態調査として「小児・AYA世代がん経験者の食生活に関するインターネット調査」を実施し、がんの治療経験がある15-39歳の男女200名から回答を得た。がん患者の食生活の現状とニーズについて解析し、日本小児科学会雑誌2023年11月号に論文報告した。②小児・AYA世代がん患者を診療する医療者側の実態調査として、「小児・AYA世代がん患者の栄養管理に関するアンケート」を実施した。1次調査(日本小児内分泌学会評議員171名中158名回答、回収率92.4%)と2次調査(がん患者の診療経験あり2次調査に協力可能107名中104名回答、回答率97.2%)の結果を解析し、関連学会で発表した。次年度に論文報告する予定である。③パイロット調査として大学病院の長期フォローアップ外来に通院する小児・AYA世代がん患者を対象に、食生活と栄養状態に関する実態調査を開始した。外来の待ち時間にアンケートを行い、希望者には栄養食事指導を行った。今後さらに症例数を増やして調査予定である。④AYA世代がん経験者と比較するために、女子大学生の健康状態と生活の変化を調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究2年目(2023年度)は、小児・AYA世代がん患者の食生活と栄養管理に関する研究の発展を目標として、現状把握と問題点の抽出に取り組んだ。患者側と医療者側の実態調査の結果を報告した。長期フォローアップ外来に通院中の患者の実態調査を開始した。当初の計画通りに概ね実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(2024年度)以降は2023年度に続き、以下の研究を実施する予定である。 ①患者側と医療者側を対象にアンケートを行い、がん経験者の栄養管理の実態を把握し、長期フォローアップにおける栄養管理の重要性を啓蒙する。2023年度は患者対象アンケートの解析結果を論文報告したので、2024年度は医師(日本小児内分泌学会評議員)対象に行った「小児・AYA世代がん患者の栄養管理に関するアンケート」の解析結果をまとめて論文化を目指す。②長期フォローアップ外来に通院する小児・AYA世代がん経験者を対象に、対面での実態調査を継続する。診療録を基に治療歴や検査結果などのデータを収集し、食生活に関するアンケートを行い、希望者には管理栄養士による栄養食事指導を行う。今後更に症例数を増やして解析を行い、学会発表する予定である。③日本小児内分泌学会CCS・内分泌腫瘍委員会の副委員長として、委員会で作成した「小児がん診療の手引き」の普及活動を行う。④日本小児血液がん学会の長期フォローアップ移行期医療検討委員会の委員として、腫瘍医と情報交換を行いながら晩期合併症対策に取り組む。⑤新型コロナウイルス感染症の流行を経験したAYA世代がん経験者と健康なAYA世代の現状を比較するため、女子大学生の健康状態と生活に関する調査を継続する。⑥運営するwebsite「小児・若年がんと妊娠」(URL:http://www.j-sfp.org/ped/)を活用し、医療者とがん患者へ情報発信を行う。 以上のように本研究課題を基盤として、がん患者の健康管理に関わる多職種(医師・看護師・管理栄養士など)の連携を発展させ、我が国の小児・AYA世代がん患者に対する診療レベル向上を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
アンケート結果の国際学会での発表を計画していたが、新型コロナウイルス感染症の流行の遷延を鑑みて海外渡航を控え、論文化したため、参加費などが未使用となった。調査でアルバイトを雇用しなかったので人件費が未使用となった。次年度使用額は上述の研究遂行のために使用する。
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