研究課題/領域番号 |
22K11738
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
吉村 征浩 神戸学院大学, 栄養学部, 准教授 (60455566)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ショ糖 / アレルギー性接触皮膚炎 / 腸内細菌叢 |
研究実績の概要 |
レルギー性皮膚炎(AD)患者数は年々増加し、食生活の変化が原因の一端であると考えられる。砂糖の過剰摂取は近年、問題視されており、日本人の平均砂糖摂取量はWHOが定める基準値を超過している。一般的には、砂糖の摂取はADに悪影響を及ぼすとされているが、砂糖摂取がAD症状に与える影響を実験的に調べた研究は少ない。本研究では、ショ糖溶液の摂取によってAD症状が悪化するかどうか調査し、その機序を明らかにすることを目的としている。 ラットADモデルの作成にはDNFBを用いた。DNFBを塗布しADを誘発した耳介の厚さを測定し炎症症状の評価を行った後、解剖を実施した。解剖までの16日間、NC群、W群には水道水、M群には10%麦芽糖溶液、S群には10%ショ糖溶液を与えた。 DNFB塗布後1日目のS群の耳介厚は他群と比べて有意に増加し、ショ糖溶液摂取によりAD症状が悪化することが示された。組織学的解析では、組織に浸潤した好酸球数がS群で増加傾向にあり、マスト細胞(MC)数はM群と比べてS群で有意に増加した。AD誘発組織における遺伝子発現量を調べたところ、S群では他群に比べ、Th1、Th2、MCのマーカー遺伝子発現量が有意に増加した。脾臓においてもTh1、Th2のマーカー遺伝子発現が他群に比べS群で有意に増加しており、ショ糖溶液の摂取により全身性の炎症が惹起されていると考えられた。さらに、腸内細菌構成の変化をPCR-DGGE法で調べたところ、S群と他群の構成は明確に異なることが示された。また、血中LPS濃度はS群で上昇する傾向にあった。以上の結果は、ショ糖溶液の摂取が腸内細菌叢構成の変化を伴いAD症状を悪化させること示している。ショ糖摂取が腸内細菌叢構成を変化させ、腸管バリア機能が低下することで血中に流入したLPSにより全身性の炎症が惹起され、ADの炎症症状が悪化したと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた実験計画の大部分を2022年度に実施することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度実施した動物実験の結果から、ショ糖溶液の摂取が、全身の免疫に影響を及ぼすこと、腸内細菌叢の変化に伴い、血中LPS濃度が上昇したことから、腸管バリア機能に影響を及ぼすことが明らかとなった。さらに、血中の短鎖脂肪酸濃度がショ糖溶液の摂取により低下したことから、短鎖脂肪酸濃度の減少がアレルギー性接触皮膚炎を悪化させている可能性が示された。以上のことから、今後はショ糖溶液と同時に短鎖脂肪酸である酢酸を小腸で生成するトリアセチンを摂取させ、アレルギー性接触皮膚炎の症状が改善するかを確かめる予定である。このことにより、ショ糖溶液の摂取によるアレルギー性接触皮膚炎症状の悪化が、血中短鎖脂肪酸濃度の低下を介して引き起こされることを示すことができる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画を大幅に上回る進捗があったため、次年度以降に配当予定であった予算を2022年度に申請し、研究を進めたため、残額が生じた。次年度以降に使用する消耗品に使用する予定である。
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