研究課題/領域番号 |
22K11743
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
宮田 昌明 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産大学校, 教授 (90239418)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | TMAO / タウリン / 胆汁酸 / FXR / 消化管 |
研究実績の概要 |
魚介類に多く存在するtrimethylamine N-oxide (TMAO)は卵や肉類中のアミン成分からも腸内細菌等の代謝を経て生成される。近年血中TMAOレベルと心血管疾患との関連性から注目されているが、脂肪性肝疾患との関連については相反する報告があり、不明のままである。そこで脂肪性肝疾患モデルと考えられるfarnesoid X recepter (Fxr)欠損マウスとその野生型マウスに0.3%TMAO含有飼料(AIN-93M)を13週間摂取させて、脂肪性肝疾患の病態の変化を解析した。Fxr欠損マウスにおいて、肝障害の有意な軽減(ALT, ALPの低下)と肝臓の胆汁酸、総コレステロールレベルの有意な低下が認められたが、肝臓のトリアシルグリセロール(TG)レベルは有意に低下しなかった。胆汁酸組成解析では肝臓ではtauro-b-muricholic acidとtauro-cholic acidの有意な低下が認められた。肝臓の遺伝子発現解析(mRNAレベル)において、胆汁酸合成酵素とコレステロール合成酵素のCyp7a1、Hmgcrの有意な低下と胆汁酸排出トランスポーターとコレステロール排出トランスポーターのBsep、Abcg5/8の有意な発現増加が認められた。一方、野生型マウスにおいては上記すべてのパラメーターで有意な変化は認められなかった。以上の結果よりTMAOは脂肪性肝疾患を進行させず、むしろ抑制させることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水産由来成分のうちTMAOも脂肪性肝疾患の予防に関連することが示唆されたことより、TMAOも本課題の標的化合物とすることが可能と考えられ、今後消化管胆汁酸シグナルの解析を実施する予定であり、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
TMAOにおいては消化管管腔内の胆汁酸組成を解析するとともに、腸内細菌叢の変化を明らかにする。また前課題からの引継ぎになるtaurineの脂肪性肝疾患予防機序の解析についても、消化管のFGF15シグナルに注目して機序の解析を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度研究が予想以上に進行したため、40万円を前倒し請求して予算額が170万円となったが、実行しようとした消化管管腔内の胆汁酸組成測定が、HPLCの不具合により実施できなかったため約19万円余ってしまった。この予算は翌年度に実施する消化管管腔内の胆汁酸組成測定にまわす予定である。
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