研究課題/領域番号 |
22K11746
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
何 欣蓉 北海道大学, 保健科学研究院, 特任講師 (50815561)
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研究分担者 |
陳 震 北海道大学, 保健科学研究院, 客員研究員 (60802634)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ビタミンK / 腎臓 / 骨格筋 / ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
【研究の目的】CKD 患者と透析患者のうち 10~40 %の割合でサルコペニアを併発し、心血管疾患や死亡・入院リスクの上昇に寄与することが知られている。サルコペニアの成因については不明な点が多いが、筋肉の量的・質的調節を担う骨格筋ミトコンドリアの機能低下が観察される。ミトコンドリアの障害による活性酸素種(ROS)の除去とエネルギーの調節のバランスが崩れ、骨格筋細胞の崩壊に至るためである。ミトコンドリアの機能上昇は、腎疾患の骨格筋障害などの予防や治療につながると考える。 【方法】ヒト腎臓近位尿細管細胞HK-2とヒト骨格筋細胞HSkMCにグルタチオン合成阻害剤であるエラスチン(Erastin)を処理し、細胞内鉄の蓄積と脂質ROSを上昇させ、細胞毒性を引き起こすモデルを確立した。その後、細胞の生存率やミトコンドリア障害に関連する遺伝子の発現量の測定、蛍光染色によりミトコンドリア品質の観察を行い、ビタミンKの添加によるHK-2とHSkMC細胞への保護効果とその作用機序を解明する。 【研究成果】Erastinを添加して細胞毒性を引き起こした細胞での脂質ROSの増加、およびミトコンドリア障害・断片化が引き起こされることが確認できた。またビタミンKを添加することにより、ミトコンドリアROSの減少、ミトコンドリア品質の改善が観察された。これらの保護作用はGPX4経路ではなく、FSP1経路を介してラジカルを除去することと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請ではビタミンKによる腎臓近位尿細管細胞とヒト骨格筋細胞のミトコンドリア障害の改善作用の解明のために、まずグルタチオンの産生を抑制し、ROSを増加させ、細胞毒性を引き起こすモデルを確立し、培養細胞への酸化ストレス負荷によるミトコンドリア機能への影響を検討すること、細胞毒性に対するビタミンKの保護作用の機序解明を行った。そのため、実験の進捗がおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、現時点で明らかになったビタミンKによる腎臓近位尿細管細胞とヒト骨格筋細胞へのミトコンドリア保護効果について、さらに細胞外フラックスアナライザーを用いてミトコンドリアの電子伝達系の機能への影響を調べることと、腎臓と骨格筋細胞の共培養によって細胞の間の関連性を調べること。さらに動物実験による筋腎連関について検討すること。この作用機序の解明による、ビタミンK投与の対象疾患を広げることができるかどうか検討する予定。
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