研究課題/領域番号 |
22K11747
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
古川 智範 弘前大学, 医学研究科, 助教 (60402369)
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研究分担者 |
西嶌 春生 弘前大学, 医学部附属病院, 講師 (90858177)
下山 修司 弘前大学, 医学研究科, 助教 (60736370)
小枝 周平 弘前大学, 保健学研究科, 講師 (00455734)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | exercise / 老齢マウス / 認知機能 / 活動量 / プロテオーム解析 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、運動を負荷した個体から採取した運動由来分子の投与によって、老化に伴う認知機能の低下を抑えられることを確認するとともに、運動由来分子が中枢神経系におよぼす影響とその作用機序を追求することを目的としている。2022年度においては、まず運動を負荷させたマウスの運動量および血清のプロテオーム解析を行った。運動負荷は、自由にアクセス可能で自発的な運動を負荷させる回転カゴおよび強制的運動負荷を行う回転カゴ両方を使用した。強制運動負荷は週3回行った。また、マウスの運動量には雌雄差があることが報告されていることから、雌雄別に8週間の運動負荷を行い、血清サンプルを解析した。また、自発運動も含めた総活動量を解析するため、活動量計測装置(NanoTag/キッセイコムテック)を腹腔内に留置した。自発的な活動量は暗期に増加し、その増加は雌のマウスの方が顕著であった。また、強制運動負荷による運動量は雌雄差が認められないことを確認した。運動負荷後、血清を採取してプロテオーム解析を行った。その結果、血清含有タンパクが雌雄で大きく異なっており、運動に由来する血中タンパクの変動には雌雄差があることが分かった。この結果については、データをまとめ、すでに論文を投稿した。プロテオーム解析から、これまで報告にない、運動に由来する新たな候補分子が同定された。同定された分子は運動に由来するものであるとともに中枢神経系に対する作用を有する可能性があることから、運動由来分子の中枢神経系作用の解明に繋がることが期待される。また、活動量および変動血清中タンパクに雌雄差が認められたことは、本研究課題の発展性に寄与すると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
運動負荷マウスの活動量の測定および血清のプロテオーム解析によって得られた成果は申請課題目標の基礎となるデータであり、目標に向けて着実に遂行している。運動によって変動が認められた血清含有タンパクに明確な雌雄差が認められたことは新たな発見であり、今後の研究計画における新たな観点を導いた。また、組織学的解析の研究成果はまだ上がっていないが、採取した運動負荷マウスの血清を非運動マウスに投与し、行動評価および組織サンプル採取もすでに行って解析段階まで進んでいるため、進捗状況は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
運動負荷マウス血清を投与したマウス脳組織において、神経栄養因子であるNGF、BDNF、NT-3、NT-4/5およびその受容体の発現を免疫組織学的に観察し、神経栄養因子の発現増加および、神経細胞における神経栄養因子受容体発現の増加を証明する。また、急性脳スライス切片を作製し、海馬LTPの記録を行ってシナプス伝達効率を評価する。さらに、海馬CA1およびCA3領域における興奮性シナプス(スパイン)密度や海馬歯状回における神経新生、ミクログリアの特性について解析する。これらの解析から、他個体へ移行した運動由来物質の働きによって海馬神経シナプスや神経新生が増加し、ミクログリアの神経保護機能が増強してシナプス伝達効率を向上させることで、認知機能低下が抑えられることを証明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
高齢動物を用いた実験において、動物1匹における評価解析項目を多く行うことにより、使用マウスの削減と時間的効率化を図ったため、高齢動物購入費(1匹あたり2万)の購入を削減することができた。余剰金については、次年度に予定している脳組織サンプルの組織学的解析や生理学的解析に必要な動物購入費用に充てる。
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