研究課題
高齢化が急速に進行する日本にとって、加齢に伴う筋量や筋力の低下、すなわち「サルコペニア」は深刻な問題である。サルコペニアは、横紋筋の収縮単位であるサルコメアの恒常性が内的・外的な要因によって維持できなくなることで発症すると考えられているが、詳しい分子機序はよく分かっていない。そもそも、サルコメアという装置の収縮メカニズムはこれまでの長年の研究によって基本的にほぼ解明されたのに対して、本装置がどうやって構成分子をターンオーバーさせてその恒常性を保っているか、に関しては未だ不明な点が多いからである。本研究では、同じ横紋筋である心筋サルコメアで近年明らかとなってきたアクチン分子のターンオーバー様式を参考にその相同性と相違性を明確にしながら、骨格筋サルコメアの恒常性維持機構を解き明かすことで、効果的なサルコメアの維持や筋量増加といったサルコペニア新規治療法の創出につなげたい。本年度は心筋におけるアクチン動態の制御因子であるフォルミン蛋白質Fhod3の欠損マウスを用いた組織細胞化学的解析および生化学的解析等により、骨格筋におけるFhod3の役割を検討した。その結果、心筋と比較して量は少ないものの、骨格筋においてもフォルミン蛋白質Fhod3が発現していること、心筋と同様にフォルミン蛋白質Fhod3がサルコメアの成熟過程に関わる可能性があること、さらに、心筋のFhod3とは局在様式に違いがあり、骨格筋特有の機能が示唆された。これらの結果に基づき、骨格筋におけるアクチン・ターンオーバーの制御機構の解明を目指したい。
2: おおむね順調に進展している
コロナ禍の影響による実験動物の飼育制限等があったため、実験に滞りが生じた。
新型コロナの5類移行によって実験をとりまく状況は改善しつつあり、当初の研究計画にできるだけ沿う形で進めていく予定である。
コロナ禍による実験動物の飼育制限等があったため、実験に滞りが生じた。新型コロナの5類移行によって実験をとりまく状況は改善しつつあり、当初計画にできるだけ沿った形で進めていく予定である。
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PLoS One
巻: 17 ページ: e0275751
10.1371/journal.pone.0275751
Molecular Pain
巻: 18 ページ: 1-12
10.1177/17448069221089784