研究課題
生体におけるNAD+生合成は、主にサルベージ経路が利用されている。サルベージ経路の律速酵素は、NAMPTである。NAMPTの一部は、白色・褐色脂肪細胞において、細胞内型(iNAMPT)として発現し、細胞外型(eNAMPT)として細胞外小胞(EV)に封入された形で血液を循環する。eNAMPTは、標的臓器・組織に取り込まれること(エンドサイトーシス)によってNAD+生合成を賦活化し、各臓器の機能亢進に寄与している。本研究は、骨格筋の異所性脂肪細胞から分泌されるeNAMPT内包EVが近傍の骨格筋細胞に輸送され、障害修復やインスリン抵抗性改善など骨格筋の機能亢進に及ぼす影響を評価することを目的としている。骨格筋の異所性脂肪には、筋芽細胞への脂肪滴としての蓄積と間葉系前駆細胞からの脂肪細胞への分化の2種類がある。本年度は、コブラ毒の主成分であるカルディオトキシンを用いた骨格筋組織障害性の異所性脂肪細胞の蓄積モデルマウスの検討を行った。カルディオトキシンを片方の前脛骨筋に注入し、細胞の壊死を誘導した。陰性対照としてもう片方の足にはPBSを注入した。カルディオトキシン接種後7日目の前脛骨筋における筋芽細胞マーカー(PAX7)および間葉系前駆細胞マーカー(PDGFRalpha)の発現を観察した。カルディオトキシン接種により有意にPDGFRalphaの発現量は増加し、PAX7の発現は減少した。これらの結果は、カルディオトキシン接種による異所性脂肪細胞の蓄積を示唆している。
3: やや遅れている
骨格筋における異所性脂肪細胞の蓄積が誘導される障害性のモデルマウスを作製できた。しかしながら、培養細胞を用いたeNAMPTの精製には至らなかった。
・培養細胞系を用いたeNAMPTの精製を行う。・骨格筋異所性脂肪細胞蓄積モデルマウスにおける骨格筋内の異所性細胞の局在およびNAD分布を明らかにする。
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