研究課題/領域番号 |
22K11772
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
斉藤 昌之 北海道大学, 獣医学研究院, 名誉教授 (80036441)
|
研究分担者 |
松下 真美 天使大学, 看護栄養学部, 講師 (60517316)
岡松 優子 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (90527178)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 褐色脂肪組織 / 食事誘導熱産生 / 交感神経 / 消化管ホルモン |
研究実績の概要 |
肥満はエネルギーの摂取と消費のアンバランスに起因する代謝異常である。エネルギー消費面からの肥満対策として、身体活動の増加が重要であることは言うまでもないが、筋肉運動によらない非震え熱産生もターゲットの一つである。1日のエネルギー消費の約10%は食事摂取後に見られる非震え食事誘導熱産生(DIT)による。寒冷刺激時におこる非震え熱産生(CIT)については、交感神経により活性化される褐色脂肪が重要な役割を果たしているが、DITのメカニズムについては不明の点が多い。本研究では、健常成人を対象に様々な試験食を摂取した時のDITを測定するとともに、交感神経活動や消化管ホルモン動態を追跡し、各被験者の褐色脂肪活性やCITとの関係を解析することによって、DITにおける褐色脂肪の役割と関与する神経・内分泌因子を解明することを目的に、以下の研究を計画しその一部を実施した。 1, DITと褐色脂肪活性の測定・評価:呼気分析法によるDIT測定とFDG-PET/CT検査による褐色脂肪活性の評価に当たっては、健常被験者の募集、研究内容の説明・同意取得を経て、被験者と密に接触しながら実施する必要があるが、新型コロナウイルス感染症の蔓延のため、実施できなかった。 2,上記の理由により被験者を確保できなかったので、過去の別研究プロジェクトで収集していた関連データを再解析し、DITの35-50%が褐色脂肪に依存することを確認すると共に、今後の実施計画や方法を再検討した。 3,試験食や交感神経活動や消化管ホルモン動態を追跡・評価する方法(心拍変動、ELISAなど)に関する情報収集・予備的検討を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
実施計画が遅れた最大の理由は、新型コロナウイルス感染症の蔓延である。 1,DITと褐色脂肪活性の測定・評価:呼気分析法によるDIT測定とFDG-PET/CT検査による褐色脂肪活性の評価に当たっては、健常被験者の募集、研究内容の説明・同意取得を経て、被験者と密に接触しながら実施する必要がある。さらに、ヒト褐色脂肪は寒冷期に増加するので、測定評価は12月~3月に限定される。しかし、新型コロナウイルスの感染状況が当初予想より長引き、当該時期にも収束には至らなかった。このため、感染リスクなどについてFDG-PET/CT検査を委託する外部医療機関とも協議した結果、今年度の測定を断念せざるを得なかった。 2,上記の理由により被験者を確保できなかったので、次年度に向けて研究実施計画を再検討するとともに、情報収集・予備的検討を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
研究進捗が遅れている最大の理由である新型コロナウイルス感染症については、位置づけが第2類から季節性インフルエンザと同等の第5類に移行するので、今後の研究実施に大きな支障にはならないと思われる。従って、今後は当初計画の内、以下の研究を実施する。 1,褐色脂肪活性の測定:健康な若年男性(主に大学生と大学院生)を被験者として、我々が開発した標準法に従って寒冷刺激(薄着で室温19℃にて2時間待機)後にFDG-PET/CT検査を行い、各被験者の褐色脂肪活性を定量的に評価する(LSI札幌クリニックに委託)。 2,DITの測定:DITに影響することが知られている試験食(高炭水化物食、高脂肪食、高蛋白質食)を摂取させ、エネルギー消費量の変化を呼気ガス中の酸素と二酸化炭素濃度の測定により算出する(呼気ガス分析装置を使用)。得られた各被験者のDITと褐色脂肪活性との関係を解析する。 3,自律神経活動の評価:上記2の測定時に心電図を記録し(既存簡易心電計を利用)、心拍変動の解析から高周波及び低周波成分を抽出して交感神経と副交感神経の活動を評価する。これとDIT、褐色脂肪活性との関係を解析する。 4.血中成分の測定:上記2の測定時に経時的に採血し、血中カテコールアミン(交感神経活動の指標)や消化管ホルモン(セクレチン、CCK、GIP、GLP-1、グレリンなど)、インスリン、グルカゴン、エネルギー基質(グルコース、脂肪酸、アミノ酸など)の濃度を測定する(市販ELISAキットなどを利用)。これらの濃度応答パターンとDIT、褐色脂肪活性との関係を多変量解析し、上記2,3の結果を併せて、DITに関与する因子を明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染状況が当初予想より長引き、当該時期にも収束には至らなかった。被験者、研究者および外部医療機関関係者の感染リスクを避けるために、使用予定経費の大きな部分を占めるFDG-PET/CT検査を実施できなかったのが主な理由である。
|