研究課題/領域番号 |
22K11775
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
樋口 真弓 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 特任研究員(常勤) (30837795)
|
研究分担者 |
菅生 紀之 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 特任准教授(常勤) (20372625)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 神経発生発達 / 神経精神疾患 / ビタミンC / 神経細胞死 / エピゲノム / 遺伝子発現 |
研究実績の概要 |
前年度までにビタミンCトランスポーターであるSlc23a2を大脳皮質特異的にノックアウトするコンディショナルマウスを作製し、その個体で目的通り大脳皮質神経細胞でSlc23a2を欠損し発現量が低下していることを確認した。これまでに全身性でSlc23a2をノックアウトしたマウスは出生後すぐに致死となるとの報告があるが、Slc23a2を大脳皮質神経細胞特異的にノックアウトした場合、成熟個体まで発達しうることがわかった。本年度はこのコンディショナルノックアウトマウスを用い、以下の解析を行った。 (1)Slc23a2欠損が大脳皮質の層形成に与える影響を調べるため、層特異的マーカー分子の抗体による免疫組織化学的解析を行ったところ、大きな異常は認められず各層の神経細胞へ分化していることが示された。 (2)大脳皮質形成においてSlc23a2欠損が細胞の生存に与える影響を調べるため、免疫組織化学的解析によりアポトーシスを調べた。その結果、胎仔大脳皮質において野生型と比較してアポトーシスが僅かに増加していた。 (3)大脳皮質形成においてSlc23a2欠損がDNAメチル化に与える影響を調べるため、抗5-メチルシトシン抗体による免疫組織化学的解析を行なった。その結果、胎仔大脳皮質において核内の5-メチルシトシンが増加していた。 以上のように大脳皮質特異的ビタミンCトランスポーターSlc23a2欠損マウスは、成熟個体まで発生することはできるものの、大脳皮質形成において異常が観察された。したがって、神経細胞内のビタミンC濃度低下によって脳発達異常が引き起こされる可能性が示唆される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Slc23a2欠損により神経精神疾患の原因ともなりうる異常な大脳皮質形成が引き起こされる可能性が示唆された。当初の予定通り、実験は概ね順調に進んでいる。次年度も予定通りこのマウスの解析を進める。特に、神経発生発達における遺伝子発現やエピゲノム調節、ゲノム安定性維持に細胞内ビタミンC低下が及ぼす影響を調べる。
|
今後の研究の推進方策 |
Slc23a2欠損神経細胞は免疫組織化学的解析で高メチル化状態を示したことから、さらに全ゲノムシークエンスにより塩基配列レベルのメチル化解析を進める。またこのエピゲノム変化に伴った、遺伝子発現変動をRNAseqにより調べる予定である。さらに、本課題の特徴であるDNA損傷の解析を進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
大脳皮質組織構築やアポトーシスの解析に時間を要したため。 遺伝子発現やエピゲノム、DNA損傷の解析の費用として使用する予定である。
|