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2022 年度 実施状況報告書

ラクトフェリンと自然免疫受容体に着目したSARS-CoV-2感染制御機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K11783
研究機関奥羽大学

研究代表者

小林 美智代  奥羽大学, 歯学部, 講師 (80316265)

研究分担者 谷 英樹  富山県衛生研究所, ウイルス部, 部長 (20397706)
前田 豊信  奥羽大学, 歯学部, 准教授 (10382756)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードSARS-CoV-2 / TMPRSS2 / ACE2 / ラクトフェリン
研究実績の概要

本年度の研究では「ラクトフェリン (LF) のSARS-CoV-2感染に対する抑制効果とその機序の解明」を目的とした。 SARS-CoV-2は宿主のII型膜貫通型セリンプロテアーゼ(TMPRSS2)とアンジオテンシン変換酵素II(ACE2)をレセプターとして感染することが知られている。そこで、ヒト肺がん由来のA549細胞におけるTMPRSS2とACE2の過剰発現株(A549-TMPRSS2-ACE2)およびACE2のみの過剰発現株(A549-ACE2)、さらにアフリカミドリ猿の腎臓上皮細胞由来のVeroE6細胞、およびVeroE6におけるTMPRSS2過剰発現株(VeroE6-TMPRSS2)を用いて、SARS-CoV-2の疑似ウイルスの感染実験を行った。
以下に結果を示す。
① VeroE6およびA549-ACE2において、LFを添加し培養したのち、SARS-CoV-2疑似ウイルスを感染させた。ラクトフェリンは濃度依存的に感染を抑制した。
② VeroE6-TMPRSS2およびA549-TMPRSS2-ACE2において、LFを添加し培養したのち、SARS-CoV-2疑似ウイルスを感染させた。ラクトフェリンは感染を抑制しなかった。
SARS-CoV-2が宿主細胞に侵入するにあたって、SARS-CoV-2がACE2に結合したのち、TMPRSS2が宿主細胞が発現している場合は、TMPRSS2がSARS-CoV-2の表面に発現しているSタンパクを切断することにより感染が成立する。しかしTMPRSS2が存在しない場合はエンドサイトーシスによって宿主細胞に取り込まれ、カテプシンにSタンパクが分解され感染が成立することがわかっている。そのことから、ラクトフェリンはカテプシンを介した感染経路に関与している可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

VeroE6および、A549-ACE細胞株およびそれぞれのTMPRSS2過剰発現株に対するLFの効果の違いが明確に出た。
しかし、Caco2のTMPRSS2過剰発現株はうまく作成することができていない。そのため、この研究の目標の一つである、LFの小腸に対するウイルス感染抑制を調べられていない。研究がやや遅れているのはそのためである。

今後の研究の推進方策

① TMPRSS2の阻害剤であるcamostat mesylateおよびカテプシンの阻害剤であるE64dを用いて、LFの添加おけるSARS-CoV-2疑似ウイルス感染の抑制の程度を比較検討する。そのことにより、LFのSARS-CoV-2感染における作用機序を解明する。
② Caco2におけるTMPRSS2過剰発現株の作成を引き続き行う。腸におけるLFの作用機序の解明に結びつける。
③ 武漢株、オミクロン株のSARS-CoV-2疑似ウイルスを用いて、LFの抑制効果およびプロテアーゼ阻害剤の効果を比較検討する。それにより、SARS-CoV-2の変異株の違いによってLFの感染抑制に対する効果を検討する。
④ LFがプロテアーゼ阻害作用を持つか検討する。これにより、LFの感染抑制の作用機序の解明に努める。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス感染拡大のため、一部実験が遅れて当初の見込み額と執行額が異なった。
研究計画に変更はなく、LFのSARS-CoV-2感染抑制の機序の解明のため、次年度において研究試薬等に繰り越した研究費も含めて使用する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Lactoferrin as a Possible Preventive and Therapeutic Agent Against SARS-CoV-2 Infection2023

    • 著者名/発表者名
      Michiyo Kobayashi-Sakamoto , Toyonobu Maeda, Junko Yusa, Hideki Tani, Yasumasa Kato, Kimiharu Hirose
    • 雑誌名

      Journal of Disaster Research

      巻: 18 ページ: 23-33

    • DOI

      10.20965/jdr.2023.p0027

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Bovine lactoferrin increases the poly(I:C)-induced antiviral response in vitro2022

    • 著者名/発表者名
      Kobayashi-Sakamoto Michiyo、Maeda Toyonobu、Kimura Miyuki、Yusa Junko、Ito Hiroshi、Tani Hideki、Kato Yasumasa、Hirose Kimiharu
    • 雑誌名

      Biochemistry and Cell Biology

      巻: 100 ページ: 338~348

    • DOI

      10.1139/bcb-2021-0342

    • 査読あり
  • [学会発表] In vitroにおけるラクトフェリン 抗ウイルス作用の解析2022

    • 著者名/発表者名
      小林美智代、前田豊信、遊佐淳子、加藤靖正、廣瀬公治
    • 学会等名
      第71回奥羽大学歯学会
  • [学会発表] ラクトフェリンのヒト小腸様細胞株Caco-2に対する抗ウイルス作用の解析2022

    • 著者名/発表者名
      小林美智代、前田豊信、谷 英樹、加藤靖正、廣瀬公治
    • 学会等名
      第11回東北口腔衛生学会総会

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公開日: 2023-12-25  

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