研究課題/領域番号 |
22K11784
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研究機関 | 城西大学 |
研究代表者 |
中谷 祥恵 城西大学, 薬学部, 助教 (20453425)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 / 骨芽細胞 / ペプチド / 低分子ペプチド / 体性幹細胞 / 造血幹細胞 / 脂肪細胞 / トリプトン |
研究実績の概要 |
間葉系幹細胞 (Mesenchymal Stem Cell, MSC) は自己増殖能と多分化能をもつ体性幹細胞である。MSCは、骨髄組織など身体の様々な組織に未分化の状態で存在し、必要に応じて骨芽細胞、脂肪細胞など多様な細胞に分化することで生体の恒常性を維持している。近年、再生医療の発展に伴い、生体由来体性幹細胞の増殖、分化を自在に調節する成分の研究開発が望まれている。MSCの増殖および分化を調節する成分としてアミノ酸、脂肪酸、サイトカインなどが報告されているが、再生医療のために生体外で未分化状態を維持させることができる因子については報告が少ない。 初代MSC培養系において、我々はコラーゲン加水分解物由来ジペプチドであるProlyl-Hydroxyproline (PO) がMSCから骨芽細胞への分化を促進させることを見出している。一方、カゼイン由来の低分子ペプチド混合物であるトリプトンはMSCの骨芽細胞分化を顕著に抑制することを明らかにした。そこで本研究では、トリプトン中にはMSCの未分化維持を補助する生理活性ペプチドが含まれていると仮説し、トリプトンがMSCの骨芽細胞への分化を抑制するメカニズムを解明することを目的とした。 DNAマイクロアレイの結果から、トリプトン添加によるMSCの未分化維持関連遺伝子としてTransferrin receptorを含め13遺伝子がスクリーニングされた。Transferrin receptorは未分化MSCで血小板への分化誘導刺激の応答に対応するために発現する可能性が報告されている。この報告はMSCへのトリプトン添加がMSCの未分化維持に寄与している可能性を示唆している。今後はトリプトンがMSCから別組織の分化へ与える影響を検討するなど、MSCの未分化維持に寄与している可能性について詳細に検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
間葉系幹細胞にコラーゲン加水分解物由来ジペプチドであるProlyl-Hydroxyproline (PO)および乳カゼイン由来ペプチドであるトリプトンを添加後、DNAマイクロアレイを用いて網羅的解析を行い、標的遺伝子を約30個見出すことができているので、概ね順調に進んでいる。 一方で、ペプチドの同定に関しては、予想に反してトリペプチドなどの低分子ペプチドに活性は少なく、アミノ酸が10以上繋がったペプチドの活性があることがわかってきたので、ペプチドの同定に時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
MSCから骨芽細胞への分化を誘導し、脂肪細胞への分化を抑制することに寄与する遺伝子を特定し、新規骨粗鬆症治療薬および抗肥満薬の候補をみつけていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
以前の科研費で実施したDNAマイクロアレイの解析を行ったため、消耗品費が少なくなった。
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