研究課題/領域番号 |
22K11786
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
佐々木 啓 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (20384969)
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研究分担者 |
石川 裕樹 昭和大学, 医学部, 准教授 (60433918)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 経鼻ワクチン / アジュバント |
研究実績の概要 |
本研究では、無菌マウスを使用する予定であったが、2022年5月に分担者が所属する研究機関が停電に見舞われ、飼育していた無菌マウスに大きな被害が出た。そのため、本研究の無菌マウスを用いた腸内細菌の実験を停止し、2022-2023年はワクチン側のアプローチを行った。すなわち、本研究の一つの目標である粘膜ワクチンにおける免疫誘導技術を検討した。 経鼻的に接種して免疫誘導できるワクチンとして一部の生ワクチンが存在するが、不活化ワクチンとしてはコレラ菌毒素CTや大腸菌毒素LTをアジュバントとしたものが実験的に使用されている。CTやLTは経鼻ワクチンアジュバントとして使用したときに確実な免疫誘導できる実績はあるものの、毒性があることが知られている。そこで、当該研究では、免疫誘導技術の一環として新たな不活化ワクチン用のアジュバント作製を検討した。 毒性が低く、免疫賦活性が高く、大腸菌系の組換え技術で容易に発現可能なRodentibacter属が産生するPnXIIIAに着目し、細胞傷害性が予測される部位の除去、抗原性が高いと予測される部位の除去を行い、291アミノ酸から構成されるポリペプチドを作製した。このポリペプチドに抗原のモデルとしてチオレドキシンとアフィニティー用のタグとしてヒスチジンタグを融合発現したものと、ポリペプチドなしでチオレドキシンとヒスチジンタグのみを発現したものとを分離精製し、それぞれをウサギに経鼻的に3回/3週で接種した。4週目で全採血を行い分析したところ、チオレドキシンに対する抗体価は、ポリペプチドを付加した場合にはIgGで2,048に対し、ポリペプチドなしでは2であった。またこのとき、ポリペプチド自体に対する抗体価は、IgGで1であった。このことは、このポリペプチドが経鼻ワクチンにおけるアジュバントの機能を持っていることを示すと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年5月に研究分担者の所属で停電が発生したため、飼育していた無菌マウスがほぼ全滅するという想定外の事態が起こった。そのため、無菌マウスを用いた実験系は全く出来ない状況になり、接種するワクチン側の実験を行うこととなった。ワクチン側の技術介入で免疫誘導をどう高めるかに目的をシフトして実験を行った。
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今後の研究の推進方策 |
本年度確立した経鼻ワクチン技術を用い、インフルエンザウイルスのヘマグルチニンと結合した状態で経鼻接種したときの基礎データを取る予定である。無菌マウスを用いた実験系はマウスコロニーの完全回復まで停止し、一般的な近交系マウスを用いた実験系を行う予定である。具体的には血清中IgG、IgA抗体価、肺胞洗浄液および鼻汁中sIgA抗体価を測定する。また糞便中からのSFB検出も試みる予定である。
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