研究実績の概要 |
我々は、ミトコンドリア呼吸鎖に共役して、硫黄代謝物を利用してエネルギーを作り出すエネルギー産生系(硫黄呼吸)を見出し報告している(Akaike T, et al, 2017, Nat. Commun.)。硫黄呼吸は嫌気的(低酸素状態)でも好気的な環境においても生体に必須なエネルギー代謝であり、様々な病態や組織でその利用が認められているが、脂肪細胞/脂肪組織での硫黄呼吸の利用の有無やその病態学的意義は明らかになっていない。本研究の目的は、脂肪細胞/脂肪組織における硫黄呼吸経路に着目し、その生理機能の全貌を明らかにすることである。 初年度は、脂肪細胞分化能を有した株化細胞3T3-L1を用いて、質量分析に基づく超硫黄分子種の精密同定・定量法、ラマン分光法を利用した硫黄の代謝状態を評価する計測技術の確立を目指し研究を行った。 我々がすでに確立している超硫黄メタボローム解析技術(Ida T, Akaike T, et al, 2014, Proc. Natl. Acad. Sci. U S A.)を脂肪細胞へと適用を拡大するとともに、システインパースルフィド[Cys-SSH]、システインポリスルフィド[Cys-S(S)nH]、グルタチオンパースルフィド[G-SSH]グルタチオントリスルフィド[G-SS-SH]などの様々な超硫黄分子種が脂肪細胞においても内因性に生成していることを明らかにした。 今後、これら脂肪細胞/脂肪組織における超硫黄分子種の制御機構、特に貯蔵と分解の制御機構に着目し解析を進める。
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