研究課題/領域番号 |
22K11802
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
宮崎 早月 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (60452439)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 転写因子 / インスリン分泌 / 膵β細胞 / 成熟機構 |
研究実績の概要 |
Mafa KO-IT6マウスに発生したインスリノーマから樹立したMafa遺伝子欠損未成熟β細胞株(Mafa-KO-MIN6細胞)は、MIN6細胞と比較してMafb遺伝子を高発現し、コンパクトに盛り上がったコロニー形態を示した。この細胞株にMafa発現を回復させたrescue細胞を作製した(Mafa-rescue-MIN6細胞)。さらに、長期に安定な成熟β細胞株MIN6-CB4細胞からCRISPR-Cas9システムを用いてMafa遺伝子の両方のアレルを欠損させたβ細胞株(CB4-Mafa-KO細胞)を樹立し、そのrescue細胞(CB4-Mafa-rescue細胞)を作製した。CB4-Mafa-KO細胞およびCB4-Mafa-rescue細胞をもちいてグルコース応答性インスリン分泌(GSIS)などの解析を進めたところ、KO細胞ではGSISは非常に低下していたが、Mafa発現により、MIN6-CB4細胞と同程度のGSISに回復した。一方、いくつかのMafa-KO-MIN6細胞株とそのrescue細胞株をもちいて解析を進めたところ、大まかに性質の異なる2群に分類されることが分かってきた。即ち、ほとんどGSISが回復しない群と、グルコース応答性は少し回復するものの高グルコース刺激に対するインスリン分泌量が非常に低い群である。成熟したMIN6細胞からMafaを欠損させた場合と異なり、Mafa欠損未成熟β細胞株では、Mafaの発現だけでは十分に成熟していないと推測された。これらの7群間(Mafa-KO-MIN6細胞(2クローン)、Mafa-rescue-MIN6細胞(2クローン)、MIN6-CB4細胞、CB4-Mafa-KO細胞、CB4-Mafa-rescue細胞)における遺伝子発現変化を解析し、β細胞の機能や成熟に関与すると推測される遺伝子・因子について検討を進めてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の7群間における遺伝子発現変化をRNA-seqを行い比較解析し、β細胞の機能や成熟に関与すると推測される遺伝子・因子について探索を行った。遺伝子発現変化に大きな差がある因子が多数見つかったが、Mafa-rescue-MIN6細胞の2クローンの内の1クローンにおいて、Mafaの発現が非常に高いことが分かった。Mafaの高発現による影響も考えられたため、Mafaの発現レベルがMIN6-CB4細胞と近いMafa-rescue-MIN6細胞を新たに追加し、9群間でのRNA-seqを行い比較検討を行った。 さらに、MIN6細胞をdoxorubicinやH2O2で刺激すると、ストレスによって細胞の老化が誘導されSASP (Senescence-Associated Secretory Phenotype)が引き起こされることから、この方法にてMIN6-CB4細胞とCB4-Mafa-KO細胞の老化を誘導するために、誘導条件を検討した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度行う予定であった老化を誘導したMIN6細胞を加えた解析を行う。これまで解析してきたMafa-KO-MIN6細胞(3クローン)、Mafa-rescue-MIN6細胞(3クローン)、MIN6-CB4細胞、CB4-Mafa-KO細胞、CB4-Mafa-rescue細胞、そして老化を誘導したMIN6-CB4細胞とCB4-Mafa-KO細胞を加えて、11群間におけるRNA-seq解析を行い、遺伝子発現の変化を総合的に検討する。これらの情報をもとにMafa遺伝子によって制御されるβ細胞の成熟や老化に関与すると推測される候補遺伝子・因子をリストアップし、それらのインスリン分泌能などへの影響を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度計画していた老化を誘導したMIN6-CB4細胞とCB4-Mafa-KO細胞のRNA-seq解析などを来年度行うことにしたため。
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