研究課題/領域番号 |
22K11808
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研究機関 | 神奈川県立保健福祉大学 |
研究代表者 |
山西 倫太郎 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 教授 (30253206)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | レチノール / ビタミンA / グルタチオン / THP-1 |
研究実績の概要 |
研究代表者が見出し報告している「レチノールによる細胞内tGSH量増加作用」は、マウスRAW264培養細胞でのみ検討してきたが、ごく最近の研究において、RAW264細胞と同類の単球・Mφ系であるがヒト細胞株であるTHP-1でも同作用が検出された。ヒト細胞に対する効果という点で、研究成果による人類への貢献がより見込まれるため、本研究ではTHP-1細胞を被検体として用いた。 作用物質としての特異性に関する検討:レチナールやレチノイン酸ならびに構造的にレチノールに関連のある類縁物質各種が細胞内tGSH量に及ぼす影響について比較した。その結果、レチノールに効果が見られた濃度でレチナールを用いたところ、細胞障害性が顕著で、細胞障害性を示さない濃度で検討したところでは効果がなかった。4-ケトレチノール・アンヒドロレチノール・レチノイン酸・フェンレチニド(レチノイン酸誘導体の一種)もtGSH量増加効果を示さなかったが、3-デヒドロレチノールはレチノールとほぼ同等の効果を示した。3-デヒドロレチノールはビタミンA2と呼ばれる分子であり、今回検討した物質の中では唯一、ビタミンA1であるレチノールと同様にビタミンA活性を有するアルコール型分子である。以上のことから、レチノール類縁物質を比較対象とした場合に、THP-1細胞におけるtGSH増加作用にはビタミンA活性が必要とされ、しかもそれはアルデヒド型やカルボン酸型ではなくアルコール型である必要があるものと考えられた。 一方、レチノールとは無関係の物質で、tGSH増加作用が報告されている物質がいくつか報告されている。THP-1細胞を用いて、これらの物質とレチノールとの間でtGSH増加作用を比較する実験を既に進めており、その結果、レチノールの作用濃度はスルフォラファンやt-BHQ等の作用濃度より高めであること等の結果が得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養細胞実験系において、研究計画調書で2022年度に実施する項目として書いた実験については、順調に実施することができ、かつ科学的に意義のあるデータが得られたものと考えている。即ち、レチノールによる細胞の抗酸化誘導を支持する有力な結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
培養細胞実験系においては、レチノールの影響がどのような細胞内情報伝達系により伝達されるのか検討したい。特に、スルフォラファンやt-BHQ等との作用の相違の有無を検討したいと考えており、これらの効果を伝達することが報告されているNrf-2経路に対する阻害剤を用いた場合に、スルフォラファンやt-BHQによる効果とレチノールによる効果の間で影響に差があるか否か検討する実験を計画している。一方、動物実験において、レチノールが細胞内tGSH量に及ぼす効果について検討したいと考えている。その際、当初の実験計画には無かったが、実験動物から採取したマクロファージあるいは樹状細胞を±レチノール添加培地で培養した場合に、これまでの株化培養細胞を用いて得られたものと同様の実験結果が得られるかについて、先に検討しておいた方がベターであろうと考えるに至った。この実験により、レチノールに対する感受性において、生体から採取したての初代培養細胞が株化培養細胞と同様であるとの証拠が得られた上で、±レチノール餌を摂取させるin vivo実験に進みたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)わずかに生じた誤差的なものと考えている。 (使用計画)令和5年度交付分と併せて使用する。
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