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2022 年度 実施状況報告書

ミクログリア-好中球連関によるアルツハイマー病増悪機構の解明と新規治療法の確立

研究課題

研究課題/領域番号 22K11814
研究機関武蔵野大学

研究代表者

赤石 樹泰  武蔵野大学, 薬学部, 准教授 (90386384)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードミクログリア / 好中球 / 神経変性疾患 / 中枢-末梢連関 / 神経炎症
研究実績の概要

中枢神経系の免疫担当細胞であるミクログリア細胞の異常は、アルツハイマー病や多発性硬化症などの神経変性疾患の発症・増悪に重要な役割を果たすと注目されている。近年、アルツハイマー病や多発性硬化症の脳や脊髄内では、本来は末梢に存在する細胞である好中球の中枢神経系への浸潤が報告されている。しかし、中枢に侵入した好中球がミクログリア細胞に対してどのような影響を及ぼすのかについては未だに不明な点が多い。そこで、私は多発性硬化症の病態モデルの1つであるEAE(実験的自己免疫性脳脊髄炎)に着目した。当初の計画では、アルツハイマー病モデル動物を用いて検討を開始する予定であったが、アルツハイマー病モデルマウスでは記憶障害の症状が出現するのに数か月以上もの時間がかかってしまうので、より短期間で発症するEAEマウスを用いることとした。多発性硬化症とアルツハイマー病のモデル動物では、ミクログリアを介した神経障害発症機構に共通点が多く、適切な実験系の選択であると考えられた。完全フロイントアジュバント、MOG35-55、百日咳毒素を末梢投与した後、数日~数週間飼育すると、マウスの尾や後肢に麻痺が出現した。EAEを起こしたマウスの脊髄切片を作成し、共焦点レーザー顕微鏡で観察すると、多数の活性化ミクログリアが認められた。ミクログリアの活性化を抑制することが報告されているミノサイクリンを数週間にわたり連日投与すると、EAEの発症が完全に抑制された。同様に、好中球の遊走を抑制することが報告されているSB225002を連日投与すると、EAEの発症が有意に抑制された。以上より、EAEマウスにおける神経障害の発症には、ミクログリアの活性化と好中球の病巣部位への浸潤が重要であると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

令和4年度は、末梢炎症を誘導することで神経炎症を発症するEAEマウスを作成し、in vivoで薬理学的解析を実施したところ、1)ミクログリア細胞の活性化を抑制すると、EAEの発症が完全に抑制されること、2)好中球の遊走を抑制すると、EAEの発症が有意に抑制されることなどを見出した。これらの結果は、EAEの発症には中枢のみならず、末梢の好中球が重要な役割を担っていることを示唆するものである。よって、本研究は「おおむね順調に進展している」と考えられた。

今後の研究の推進方策

令和5年度の検討では、好中球の遊走を抑制する薬物を末梢投与することで、EAEマウスにおける脊髄内ミクログリアの過剰活性化が抑制されるかどうか明らかにする。また、好中球がミクログリア細胞を活性化させる分子メカニズムを解明するため、好中球の脊髄内への浸潤が確認されたEAEマウスの脊髄から好中球とミクログリア細胞を単離し、各細胞で増減する受容体やシグナル分子などを解析する。

次年度使用額が生じた理由

令和4年度は、EAEマウスを用いたin vivo研究が予想以上に進展したため、関連する実験を優先的に行った。そのため、当初予定していたミクログリア-好中球連関に関するメカニズムの検討(MACSを用いた細胞分離とFACSを用いた細胞内タンパク質の発現解析などの実験)が令和4年度中には実施できなかった。in vivo実験に必要な試薬代とMACS及びFACS解析に必要な試薬代を比べると、後者の方が高額であるため、結果として次年度使用額が生じた。
令和5年度は、MACS及びFACS解析を中心に研究を進めるため、未使用となった予算は速やかに執行される見込みである。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 3’,4’,7-Trihydroxyflavoneの神経炎症抑制作用におけるJNK-STAT1経路の関与2022

    • 著者名/発表者名
      赤石樹泰, 山本昇平, 阿部和穂
    • 学会等名
      第96回日本薬理学会年会

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公開日: 2023-12-25  

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