研究課題/領域番号 |
22K11830
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研究機関 | 神奈川県立保健福祉大学 |
研究代表者 |
向井 友花 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 教授 (60331211)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 植物ポリフェノール / 吸収動態 / 腸上皮細胞 / 慢性炎症 |
研究実績の概要 |
本研究は、腸管で吸収されない植物PPが、腸内細菌への作用を介して腸管組織の慢性炎症を軽減するという仮説を検証することを目的としている。本研究の成果から、植物PPによる慢性炎症改善の分子機構を解明し、腸内細菌をターゲットとした新しい炎症性腸疾患の早期予防法が提案できると考えている。 本年度は、前年度に引き続き「課題① 経口的に摂取された植物PPの吸収動態の解析」を実施した。動物実験として、交配・出産し授乳中の雌性ラットにd-カテキンを強制経口投与し、生体試料(血漿、母乳、腸管内容物)を得た。前年度までに確立したHPLC条件を用いて生体試料中のPP濃度を測定したところ、吸収されグルクロン酸抱合体となったカテキンが血中および母乳中から検出された。また、腸管内容物からもカテキンが検出された。したがって、経口摂取したカテキンは腸管内を通過するが、その一部はグルクロン酸抱合化されて血中に吸収され、母乳にも移行することが推測された。 また、「課題③ 植物PPの腸上皮細胞への直接的作用」として、吸収されなかった植物PPが腸管組織の慢性炎症を軽減するか否かをヒト腸上皮由来細胞Caco-2を用いて検討した。カカオPPの水溶性および非水溶性画分をin vitro実験に供した。カカオPP各画分に曝露した後、TNF-αにより炎症を誘発したCaco-2における炎症関連因子iNOSのmRNA発現量をRT-PCRにより測定した。その結果、カカオPPは一定の濃度下において腸上皮細胞の炎症反応を抑制する作用を有する可能性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、前年度から継続して「課題① 経口的に摂取された植物PPの吸収動態の解析」を実施した。また「課題③ 植物PPの腸上皮細胞への直接的作用」を検討し、一定の研究成果が得られたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ここまで、研究計画当初の予定とは変更し、課題③を先行して実施した。 今後は、「課題② 植物PPによる腸管組織の慢性炎症の改善作用と腸内細菌叢の変化」を検討するため、動物実験を実施する予定である。本研究の仮説である、慢性炎症の改善に腸内細菌が関与するか否かを検討する。得られたサンプルは課題①の結果をさらに補完するための解析も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
人件費として使用予定だったが、年度末に急遽労働計画が変更になったため次年度使用額に回ることとなった。 翌年度分として請求した助成金と合わせ、2024年度に行う実験に必要な物品購入および人件費に充当する予定である。
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