研究課題/領域番号 |
22K11831
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研究機関 | 北海道科学大学 |
研究代表者 |
平山 早苗 (村岡早苗) 北海道科学大学, 薬学部, 准教授 (20347793)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 脂肪細胞 / 脂肪の蓄積 / カタラーゼ / カタラーゼ阻害剤 |
研究実績の概要 |
肥満は、脂肪組織における脂肪の過度な蓄積によって特徴づけられ、生活習慣病をはじめとする様々な疾患を誘発する因子である。昨今の医療費圧迫の面からも、効果的な肥満の予防や治療は社会的にも重要な課題であるが、有効な治療薬はいまだ開発されていない。そこで、肥満の予防や治療薬の開発には、脂肪の蓄積へ影響を与えるメカニズムを解明することが重要である。申請者は、脂肪細胞における脂肪の蓄積とともに抗酸化酵素である細胞内カタラーゼ活性が上昇することを実証し、脂肪細胞内のカタラーゼが本来の抗酸化酵素としての役割ではなく、脂肪蓄積量の調節に関与している可能性に着目した。そこで、脂肪蓄積の制御に対する新しい標的にカタラーゼがなり得るのではないかと考え、本研究では、脂肪細胞におけるカタラーゼ活性の阻害が脂肪蓄積へ与える影響を検討し、その詳細な機構について検証することを目的としている。 カタラーゼの脂肪蓄積に対する調節機構を明らかにすることは、脂肪蓄積に影響を与える新たな標的の発見となる。さらに、肥満の新たな治療薬の探索への基礎データを供与し、肥満をコントロールする新たな医薬品の開発に貢献できると考える。 脂肪の蓄積に影響を与える化合物の探索も、脂肪の蓄積量だけではなく、脂肪細胞中の脂肪滴の大きさや脂肪細胞の抗酸化能の変化に着目したスクリーニングをすることで、生活習慣病の予防に関わる機能性食品や新たな医薬品の開発につながることが期待される。さらに、ヒトにおける平均余命を延長させる健康的な肥満の誘導方法の創出にもつながると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度研究実施計画に記載したように、今年度はカタラーゼ活性の阻害が脂肪蓄積に与える時間的影響および阻害剤の濃度を検証した。その結果、カタラーゼ阻害剤である3-amino-1,2,4-triazole(3-AT)は脂肪細胞において0~10mMの範囲で細胞毒性がないことが確認された。次に脂肪蓄積に与える時間的影響を確認するために、分化誘導6日目の脂肪細胞に、3-ATを種々濃度で添加した通常培地で3日間培養した分化開始から9日目の脂肪細胞におけるカタラーゼ活性及びカタラーゼ量と脂肪蓄積に倒する影響を検証した。その結果、免疫蛍光法により測定した細胞内カタラーゼ量は影響しなかったが、3-ATは濃度依存的に細胞内カタラーゼ活性を阻し、脂肪の蓄積を減少させる傾向が観察された。しかし、分化誘導6日目の脂肪細胞に対する3-ATの影響は、顕著にみられなかったため、分化誘導3日目の脂肪細胞に対する3-ATの影響を検証した。その結果、3-ATによる細胞内カタラーゼ活性への影響は見られなかったが、脂肪蓄積を減少させる傾向が観察された。その結果、分化誘導3日目以降、カタラーゼ活性が必要であることが明らかとなった。これらの結果の一部は、学会で発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の研究結果から、カタラーゼ活性の阻害が脂肪蓄積に与える時間的影響を確定し、3-amino-1,2,4-triazole(3-AT)によるカタラーゼおよび脂肪の蓄積に関わる発現タンパク質と遺伝子発現への影響をウエスタンブロット法、免疫学的染色法およびRT-qPCR 法により測定することで検証する。その結果からカタラーゼ活性の阻害による細胞内遺伝子発現への影響を明らかにする。また、当初3-ATと同時に検討するはずだったNOドナー薬について、適切なNOドナー薬の検討から、カタラーゼ活性および脂肪の蓄積に対する影響についても3-ATと同様な手順で検討する。これらの実験結果は、関係学会への発表と国際雑誌への論文投稿を進める。
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